米国の抱く幻想
今週、米国防総省のパトリック・ライダー報道官は、米国は自国の安全を犠牲にすることなく、両方の紛争を支援するために必要なすべてを同省は有しているとする声明を発表したが、米国内の専門家らからはこれを疑問視する声が挙げられている。
ブルッキングス研究所の外交政策専門家あるマイケル・オハンロン氏は、こうした発言は短絡的すぎると指摘している。
「バイデン政権はあたかもこれは簡単な話か、(ウクライナとイスラエルに対する)ちょっとした贈り物かのように話している。だが、実際は違う。国防と産業に今すでに間違いなくストレスを感じているのに、この先、どれだけ負担となるか、想像に難くない」
米国の自衛は大丈夫?
ザ・ヒル紙は、米国製兵器に対する大きな需要が生まれたことで、米国は自国の備蓄補充ができず、メーカーも注文に対処しきれず、苦戦するという前例が出来てしまったと指摘している。例えば、イスラエルとハマスの間で突然、紛争が勃発したため、米国防総省はウクライナ向けの155ミリ砲弾数万発をイスラエルの方に送ってしまった。
安全保障の専門家のマシュー・クレニング氏は、米国は冷戦の終結以来、兵器生産能力を重視しなくなったために、国は安全保障の国益を守るうえで危険な立場に置かれていると指摘している。
「現実には、米国には欧州、中東、アジアにおける自国の安全保障上の国益を守るための兵力も弾薬も国防産業の基盤もない」
ザ・ヒル紙は紛争が長期化する可能性も、ホワイトハウスには向かい風になっていると指摘している。ウクライナは紛争2年目に入ろうとしており、イスラエルのガザ地区での地上戦は数カ月も長引く恐れがある。
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