NHKなどによると、これまでに塩谷氏は党に提出した弁明書で、「総裁も含む党の少数幹部により不透明かつ不公平に処分を決定することは、自由と民主主義に基づく国民政党を標榜するわが党そのものの否定であり、このような独裁的・専制的な党運営には断固として抗議する」と強く反発していた。
また、岸田首相も党首として責任を問われるべきだと主張。この発言は、おそらく個人的な恨みから引き起こされたミクロな対立だが、一連の処分は党の問題全体の「氷山の一角」に過ぎない。こう語るのはロシア科学アカデミー、中国・現代アジア研究所、日本研究センターのヴァレリー・キスタノフ所長だ。
「自民党の政治資金をめぐる不祥事は、今回の不記載問題だけではない。統一教会との関係や、所属議員による選挙買収事件などスキャンダル続きだ。今回の塩谷氏の反抗は、党内の争いにすぎない。不祥事の原因を解決するには、党員個人を排除するのでなく、党の抜本的な構造改革による、コンプライアンス面での健全化の必要がある。岸田首相についていえば、外交の場で政治的ポイントを稼ごうとして、こうした争いから距離を置こうとしている」
こうした不祥事を背景に、岸田政権の支持率は下がり続けている。時事通信が実施した世論調査での内閣支持率は16.6%となり、政権発足以来最低となった。
一方でキスタノフ所長は、「不祥事は内閣への信頼を損なうものだが、岸田政権不支持の主な原因は政治資金問題ではない」と続ける。「支持率低下の主な理由は生活への不満。20年以上にわたって実質賃金は下がり続ける一方、今物価は上昇し、国民の懐を直撃している。やはり国民の一番の関心事は自らの生活だ」と締めくくった。