【視点】日本+中央アジア5カ国首脳会合 参加国に何をもたらすのか?

日本政府は今夏開催の中央アジア5カ国との首脳会合に向けた準備を始めた。5カ国とはカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンである。岸田首相も出席する。カザフスタンで開催される予定だが、日程はまだ発表されていない。サミットでは経済協力が中心テーマになる見込み。
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2022年、日本と中央アジア5カ国は外交関係樹立30周年を迎えた。近年、日本と5カ国との交流は活発化している。2023年11月、日本とキルギスは友好と包括的パートナーシップに関する共同声明に署名した。2024年4月初旬には、原子力の平和利用におけるカザフ・日本協力関係を拡大するため、カザフスタン代表団が日本を訪問した。そして最近では、名古屋市に初の「日本・ウズベキスタン貿易センター」がオープンした。同センターは日本におけるウズベク製品の普及に重要な役割を果たすはずだ。
どんな動機で日本は中央アジア地域での協力を強化しているのだろうか?CIS諸国研究所カザフスタン・中央アジア課課長のアンドレイ・グロジン氏は次のように語る。

「まず、日本に先駆け、早ければ2024年4月にもタシケントでEUと中央アジア諸国の第1回首脳会合が開催され、EUからはウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とシャルル・ミシェル欧州理事会議長が出席する予定であることを指摘しておきたい。この2つの首脳会合の目的は、中央アジア諸国との協力においてロシアと中国に挑戦することだ。

欧州諸国と日本が中央アジア諸国との関係を活発化する動機には3つの方向性がある。1つ目は、歴史的・地理的パートナーであるロシアや中国とこれらの国の関係にくさびを打ち込むこと。2つ目は、資源の安全保障への『保険』をかけたいという願望。ロシア産原材料の輸入を拒否した日本や西側諸国は代替品を探さなければならなくなった。中央アジアへの関心は、これらの国々に先端産業で需要のあるレアメタルおよびレアアースの鉱床があるため高まっている。3つ目は、貨物輸送と関係している。カスピ海横断国際輸送ルートなど、ロシアを経由しないで欧州へ抜ける輸送ルートの創設だ」

アンドレイ・グロジン氏
CIS諸国研究所カザフスタン・中央アジア課課長
グロジン氏によれば、日本はロシア、中国、米国などに比べて中央アジアへの関与が遅れているという。

「日本は中央アジア諸国から農産物を輸入することにも関心がある。一方、物流が複雑で輸送コストが高く、それが最終的な価格に影響している。日本はこれらの国々に多くのことを約束し、近代化と人材育成の面で多くの貢献をしている。例えばトルクメニスタンの石油化学分野など、いくつかの本格的なプロジェクトが実現した。しかし、これらはすべて単発のプロジェクトだ。

これらの国々におけるインフラ整備や、ロシア、イラン、中国を迂回する最適な輸送ルートの構築には莫大な投資が必要であり、これはリスクの高い投資でもある。EUは中央アジア諸国に100億ユーロ(1兆6366億円)の投資を約束した。だがこれは、全5カ国に対して数年間という期間で行われるものだ。日本は何を提供できるだろうか?サミットで日本+中央アジア5カ国は、友好と協力について多くの言葉を交わし、約束をし、期待されるプロジェクトについて語るだろう… 一方、世界的な経済危機、政治的混乱、輸送問題を背景に、これらはどう実現されるのだろうか?」

アンドレイ・グロジン氏
CIS諸国研究所カザフスタン・中央アジア課課長
グロージン氏は、もちろん中央アジア諸国自体も日本やEU諸国との協力に関心を持っているとの見方を示している。
「中央アジア諸国の戦略は、世界の権力中枢の争いに乗じてビジネス・プロジェクト、インフラへの投資、原材料やその他の経済分野の開発を最大限拡大することだ。中央アジア諸国は、近代的な技術を獲得したり、マネジメントや投資を受けるという観点から日本に関心を持っている。そして日本は、炭化水素資源をはじめとした輸入の多角化に非常に強い関心を抱いている。一方、この地域は、資源を世界市場へと送り出す輸送ルートの面で孤立しており、それが障害となっている。これらの国々には資源があるが、問題はそれをどのように輸送するかだ。もちろん、バナジウムやビスマスは飛行機で運べるが、石油、ガス、ウランは飛行機では輸送できない」
アンドレイ・グロジン氏
CIS諸国研究所カザフスタン・中央アジア課課長
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