「日本がNATOに加盟すれば、条約に従ってNATOの軍事作戦に参加する義務が生じる。そういう展開には日本は全く興味がない。日本政府にとって重要なのは防衛費を増額し、米国やNATO諸国との軍事同盟を強化することによって、自国の防衛力を強化すること。2022年、日本政府はNATO諸国に倣い、2027年までに防衛費をGDPの2%まで引き上げる計画を発表した。自衛隊はNATOが使用するものと互換性のある武器・弾薬の備蓄を増やしている。
日本は数十年にわたってNATOと接触してきた。海上自衛隊は太平洋と地中海で行われるNATOの二国間、多国間演習に参加している。こうした傾向はすべて、防衛力を強化し、日本をアジア有数の軍事大国にしたいという、この国の指導部の願望に合致している。だが、NATOとの関係を発展させる一方で、日本政府は少なくとも、今のところは、独立した権力は保持し続けたいと考えている」
「NATOも含め、どんな組織でも加盟には一定の義務を伴う。加盟すれば、自由な行動は制限される。日本としてはこうした事態を避けて、同盟関係やパートナーシップにとどめたい。 なぜならば、日本がNATOに加盟すれば、対中関係は悪化し、日本経済に深刻な影響を与えかねないからだ。日本は中国の主要な貿易相手国であり、投資国でもあるため、そのすべてが失われるかもしれない。
そうなれば日本と、アジア太平洋地域で激化し続ける米中対立の中で、どちらの側につくか難しい選択を迫られているASEAN加盟国との関係は悪化する。さらに、NATOがこの地域に進出すれば、地域の安全保障面ですでに弱体化しているASEANの役割はさらに弱まる。ところが日本は安全保障や防衛で米国への依存があまりにも大きく、主権の行使力はとても弱い。このため、もしワシントンが日本に強く圧力をかければ、日本は屈服せざるを得ない...」
「第一に、NATOという陣営は定義上、欧州の安全保障確保のためであり、世界の安全保障を目指していないため、東南アジアにおいては立場は弱い。第二に、日本のNATO加盟は、地域の数か国にとっては挑発行為で、軍事的脅威とみなされる恐れがある。つまり、最もありうるのは、NATOは統合という手段でグローバル化するのではなく、NATOの利益と関連する体制を作ることでグローバル化を進めるというシナリオだ。
その一例がAUKUSで、岸田首相は先日、バイデン米大統領との首脳会談で、日本政府はAUKUSと直接的なパートナーシップを結ぶとは最終的に決めていないが、議論はしていると述べた。私が思うに、JAUKUSの登場はかなり現実的だ。そして日本に続いて、甚大な経済的・軍事的潜在力を持つ韓国も同盟に加わるかもしれない...」