【視点】日本のNATO加盟は現実的か?

日本の外務省は2024年度版「外交青書」の中で、変わりゆく国際安全保障環境に対応し、法の支配に基づく国際秩序を維持・強化するため、日本は基本的価値と戦略的利益を共有するパートナーであるNATOとの戦略的な連携を着実に強化していくことを明らかにした。
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2023年5月、岸田首相は 「日本がNATOの加盟国、準加盟国になる計画はない」と述べた。その直後の2023年7月、日本は2023年から2026年までの日・NATO国別適合パートナーシップ計画(ITPP:Individually Tailored Partnership Programme)を採択。この計画に記された16の協力分野には、海洋・宇宙安全保障、サイバー防衛や情報操作などの脅威に対し、合同軍事演習までを含む共同行動、軍備管理、軍縮・不拡散の分野が含まれている。
日本のNATO加盟は時間の問題か、加盟を妨げている要因は何かについて、スプートニクが専門家に見解を尋ねたところ、様々に異なる意見がかえってきた。
元駐日ロシア大使で、現在、モスクワ国際関係大学外交学科長のアレクサンドル・パノフ氏は次のように考えている。

「日本がNATOに加盟すれば、条約に従ってNATOの軍事作戦に参加する義務が生じる。そういう展開には日本は全く興味がない。日本政府にとって重要なのは防衛費を増額し、米国やNATO諸国との軍事同盟を強化することによって、自国の防衛力を強化すること。2022年、日本政府はNATO諸国に倣い、2027年までに防衛費をGDPの2%まで引き上げる計画を発表した。自衛隊はNATOが使用するものと互換性のある武器・弾薬の備蓄を増やしている。

日本は数十年にわたってNATOと接触してきた。海上自衛隊は太平洋と地中海で行われるNATOの二国間、多国間演習に参加している。こうした傾向はすべて、防衛力を強化し、日本をアジア有数の軍事大国にしたいという、この国の指導部の願望に合致している。だが、NATOとの関係を発展させる一方で、日本政府は少なくとも、今のところは、独立した権力は保持し続けたいと考えている」

アレクサンドル・パノフ氏
モスクワ国際関係大学外交学科長
サンクトペテルブルク極東研究センターのキリル・コトコフ所長は、日本は自国の国益を尊重しており、NATOに加盟する計画はないものの、米国が望めば、計画変更もありうると考えている。

「NATOも含め、どんな組織でも加盟には一定の義務を伴う。加盟すれば、自由な行動は制限される。日本としてはこうした事態を避けて、同盟関係やパートナーシップにとどめたい。 なぜならば、日本がNATOに加盟すれば、対中関係は悪化し、日本経済に深刻な影響を与えかねないからだ。日本は中国の主要な貿易相手国であり、投資国でもあるため、そのすべてが失われるかもしれない。

そうなれば日本と、アジア太平洋地域で激化し続ける米中対立の中で、どちらの側につくか難しい選択を迫られているASEAN加盟国との関係は悪化する。さらに、NATOがこの地域に進出すれば、地域の安全保障面ですでに弱体化しているASEANの役割はさらに弱まる。ところが日本は安全保障や防衛で米国への依存があまりにも大きく、主権の行使力はとても弱い。このため、もしワシントンが日本に強く圧力をかければ、日本は屈服せざるを得ない...」

キリル・コトコフ氏
サンクトペテルブルク極東研究センターの所長
軍事政治学者協会の専門家オレグ・グラズノフ氏は、日本のNATO加盟は、NATO自身も日本も必要としていないと考えている。

「第一に、NATOという陣営は定義上、欧州の安全保障確保のためであり、世界の安全保障を目指していないため、東南アジアにおいては立場は弱い。第二に、日本のNATO加盟は、地域の数か国にとっては挑発行為で、軍事的脅威とみなされる恐れがある。つまり、最もありうるのは、NATOは統合という手段でグローバル化するのではなく、NATOの利益と関連する体制を作ることでグローバル化を進めるというシナリオだ。

その一例がAUKUSで、岸田首相は先日、バイデン米大統領との首脳会談で、日本政府はAUKUSと直接的なパートナーシップを結ぶとは最終的に決めていないが、議論はしていると述べた。私が思うに、JAUKUSの登場はかなり現実的だ。そして日本に続いて、甚大な経済的・軍事的潜在力を持つ韓国も同盟に加わるかもしれない...」

オレグ・グラズノフ氏
軍事政治学者協会の専門家
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