GDPについては、2024年度を前回の1.2%から0.8%に下方修正した。個人消費の落ち込みが理由。日本の家計は消費行動ではなく貯蓄行動が特徴であるため、金利が上昇すれば貯蓄の魅力はさらに高まる。フィナム社マクロ経済分析課の責任者を務めるオリガ・ベレニカヤ氏は日本の状況について次のようにコメントした。
「日銀は今年3月、『革命的』な行動に出た。2007年以来初めてとなる利上げに踏み切り、2016年に導入したマイナス金利を解除、また10年物国債の利回りを低く抑えるイールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃した。日銀総裁は、デフレ状況下で長年にわたって実施してきた超金融緩和政策を段階的に縮小する意向を示唆したが、日銀の予想によれば向こう3年間でインフレ率は目標の2%に近づくため、現在はその切実性が失われつつある。
日本のインフレ率は、大幅ではないものの、2年間にわたって目標水準の2%を上回っている(3月は2.7%)。日本の国内需要は非常に弱く、ここではインフレ加速リスクが33年ぶりの記録的な賃金上昇と関連している可能性が高い。一方、円安が続くと輸入品価格が上昇するため、明らかなインフレリスクとなっている」
期待とは裏腹に、日銀が円安に配慮することはなかった。しかし、急激な円安を防ぐために金利を引き上げる価値はあるように思われる。一方、ベレニカヤ氏は、別の問題が生じるとの考えを示している。
「米連邦準備制度理事会(FRB)の金利は5.25~5.5%程度の水準に据え置かれている。そのため米国債の利回りは年初から大幅に上昇し、最近では5か月ぶりの高値に達した。日米の10年国債利回りの差は現在380ベーシスポイントで、数年ぶりの水準に近づいている。これを背景に、ドル円相場は34年ぶりの高値水準を更新しており、年初からすでに12%以上上昇している。
例えば、利上げを早めるなどして、日米の金利差を縮めることでこの状況から抜け出すことが可能なはずだ。一方、日本の債務残高が過去最大の1286兆4000億というGDP比260%に達した状況でこれを達成するのは難しい。予算の約30%が債務の返済にあてられている。金利の上昇は、債務負担の悪化を意味する」