【視点】日仏、安全保障分野における戦略的協力を強化へ

仏パリで2日、日仏首脳会談が開かれ、両国の安全保障分野における戦略的協力を強化することが決まった。日本外務省の発表によると、岸田首相とマクロン大統領は「日仏部隊間協力円滑化協定(RAA)」の交渉開始について合意した。これは自衛隊と仏軍の相互往来をスムーズにし、共同訓練や災害援助などで部隊が相手国を訪問する際に入国審査が免除され、武器弾薬の持ち込み手続きなども簡素化するというもの。
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日本はすでにオーストラリアおよび英国とRAAを締結し、フィリピンとも協議を行っている。岸田氏とマクロン氏は核・ミサイル問題などを含む北朝鮮への対応、中東情勢およびウクライナ情勢などについても意見交換し、今後も緊密に連携することで一致した。また両首脳は原子力、宇宙、イノベーションなど多くの分野で経済協力を強化することで合意した。
岸田首相のフランス訪問について、欧州研究所の主任研究員セルゲイ・フョードロフ氏がコメントした。

「マクロン氏と岸田氏は20歳も年齢が離れている。岸田氏はマクロン氏より20歳年上で、衝動的なマクロン氏よりも政治における経験が豊富かつ慎重だ。一方、世界秩序に対する見解が似ていることや、世界で起こっている混乱や紛争を背景に抱える経済問題が共通していること、また国際政治においてより知名度のあるプレーヤーになりたいという願望が両氏を結び付けている。今回の合意は、2023年に採択された経済や安全保障などの分野における今後5年間の二国間協力のロードマップ推進における新たな一歩だ。昨年、陸上自衛隊と仏陸軍はニューカレドニアで、航空自衛隊と仏航空宇宙軍は宮崎県で共同訓練を実施した。フランスは南太平洋に海外領土と軍基地を持っており、日本やオーストラリアと同様、インド太平洋地域における中国の軍事力増強を懸念している。しかし、一方では中国が地政学上のライバルとして両国の懸念を呼んでいるとしたら、他方ではフランスも日本も中国との経済関係に非常に関心を持っている。

マクロン氏が日本にNATOの連絡事務所を開設することに強く反対したのは、中国を怒らせたくなかったというのがその理由だった可能性がある。なお、日本政府もこれに関しては特に熱心ではなかった。日本とフランスの立場の違いは、日本は経済大国だが政治的には依然として小国であり、多くにおいて米国に依存していることだ。マクロン政権下のフランスは米国からも中国から独立した権力の中枢となる方針を取った。そして、インド太平洋地域で起こるすべてのことは、フランスよりも日本にとってはるかに身近であり、センシティブだ。したがって日本政府にとっては、志を同じくする国々を軍事協力に引き込むことが重要だ。ウクライナでの出来事は、こうしたプロセスをただただ加速させた」

セルゲイ・フョードロフ氏
欧州研究所の主任研究員
岸田首相は同じく2日、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の開会式で基調演説し、世界の様々な地域のOECD非加盟国との連携強化を訴えた。岸田氏はまた、日本が60年前にアジアで初めてOECDに加盟したことに言及し、「日本は数少ないアジアの加盟国として、これからもOECDとアジア地域の架け橋となり、OECDが将来にわたって世界経済を主導するための貢献を果たしていく」と述べた。また気候変動、脱炭素、自由貿易、サプライチェーン、人工知能(AI)開発などを含む多くのテーマに触れた。
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