【視点】先進国で多産が蘇る見込みは皆無

日本では、16年後の2040年までに認知症高齢者の数が580万人に達する可能性がある。また、36年後の2060年までには、認知障害の兆候を持つ高齢者が650万人近くに達し、65歳以上の人口のほぼ20%を占めることになる。日本の医師たちは、認知症の発症を抑制、防止できる薬の開発にブレイクスルーが起きてほしいと期待を寄せている。この記録的な少子高齢化の問題に解決方法はあるのだろうか?
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いずれにせよ、日本は高齢化が進んでいる。現在、年金受給年齢者が日本の総人口の 29% 、3620万人以上を占めており、その数は出生率の低下とは対照的に今後も増加する。
リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の研究者で、世界保健機関(WHO)の専門家のリュボフ・エロフェエワ氏は、この問題を解決する万能薬はないとして、次のように語っている。

「出生率の低下傾向は、ほとんどの先進国で見られる。こうした国でも多産の習慣を維持する地域はあるが、低下傾向を元に戻すことはできないだろう。死亡率の低下は適切なケアと医療によって達成できても、多産を人に強いることは現実的に不可能だ。欧州ではまだましな状況にあるとされる仏でさえ、出生率は1.7であるのに対し、アジアやアフリカの発展途上国ではこの数字は2.5だ。

単純に人口を再生産するには、必要な出生率は最低2.2。もちろん、子どものいる家庭に対する社会的支援のためのプログラムがあり、国によっては出産のたびに交付金の支給がある。働く母親のための保育所もあるが、こうした支援サービスは思ったほどの効果を生んでない。なによりも、若い家族には居住スペースが必要だが、それは子どもが生まれたからといって得られるものではない。彼らが組める住宅ローンが必要だし、シングルマザー向けの特別支援も要る。 もはや、畑仕事と家事を手伝わせるために子どもを多く生んでいた伝統は過去のものだ。いまや、先進国で多産の伝統が復活する見込みは非常に低い」

社会心理学分野の専門家であるアレクサンドル・テスレル氏も、同様に悲観的な見解を持っている。

「残念だが、少子化の問題は、これまで直面しなかった国々にも広がり始めた。カトリックのイタリア、中国、メキシコがその例で、経済の成長とともにその傾向は強まっている。生活水準が高い場合、養育に求める要求も高くなる。子どもに良い教育を与え、スポーツや音楽など多面的な発達を願うが、これらすべてに多大な費用がかかる。

心理学の視点からいうと、養育は重労働で、個人の自由を制限し、物質的な犠牲を強いる。子育ては責任が重く、親の可能性の輪を狭め、常に神経が要される。心配事の尽きない環境で右往左往するのではなく、一度きりの自分の人生を生きたいと人は願うものだ。社会的支援策、交付金、就学前児童の教育施設の創設、大家族の促進の訴えなど、これらはすべて必要で有益だが、出生率の上昇には大きな影響を与えない」

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