溶血性レンサ球菌感染症とは何か、何が原因で日本で流行しているのか? ロシア諸民族友好大学感染症学科のセルゲイ・ヴォズネセンスキー准教授にお話を伺った。
「溶血性レンサ球菌は、咽頭炎や肺炎から泌尿生殖器系の炎症、皮膚の発疹、敗血症に至るまで、様々な病気を引き起こしかねない点で、かなり危険な細菌だ。そして、人によっては重篤化する。それでも全員が発病するわけではない。多くの人はこの病気に対処できる免疫を十分に持っており、全く症状が出ない人もいる。
感染経路としては、無症候感染者からの飛沫感染、細菌が付着した食物による感染、物質を介した家庭内での接触感染、母親の性器が溶連菌感染症に罹患している場合の分娩時感染がある。この場合、感染症は妊婦から赤ちゃんにうつる可能性がある。さらに、一般的な感染症として、皮膚の傷から病原体が体内に侵入するものがある。これは、皮膚の化膿性炎症(丹毒)を引き起こすことがある」
ヴォズネセンスキー氏は、日本での流行は、新型コロナウイルスのパンデミック下で、医者にかからずに自己判断で無制限に抗生物質を摂取し、消毒薬を過剰な使用したことも、原因のひとつだとみている。
「パンデミックの間、消毒が徹底されたために、溶連菌は変異を起こした。より攻撃的になった新しい菌株が現れ、既存の薬が効かなくなった。また、日本ではパンデミック時にマスク着用、交友の制限、密を避けるなど、かなり厳しい対策がとられていた。つまり、長期間にわたり、人々はこうした細菌に接していない。その結果、防御が解除された今、他の多くの呼吸器感染因子と同様に、特定の病原体に対する免疫力が低下し、感染数が増加している。これは単に人々が感染しやすくなったからだ」
ヴォズネセンスキー氏は溶血性レンサ球菌の発生は局地的であって、「これまでの例からすると、溶血性レンサ球菌が集団感染に発展する可能性はない」として、迅速な診断と適切な抗菌療法を行えば、流行には至らないと考えている。