防衛省が採用できたのは募集計画の1万9958人のうち9959人足らずで、採用率は51%にとどまった。防衛省はその理由を少子化による人口減少、民間企業の就職条件のほうが若者にとって魅力的であること、そして世間に暴露されたハラスメントの事例と結びつけている。問題の調査のために防衛省が設置した委員会は、人材基盤を強化のための3つの方法として、自衛官の処遇(給与)と生活勤務・環境の改善、人工知能(AI)の活用による省人化や無人化、OBや民間人材の活用の検討に入り、来月末までに回答を出す方針を固めた。だが、人材を巡る厳しい状況は2024年度も続く見通しだ。
モスクワ国立国際関係大学、東洋学部のウラジーミル・ネリドフ准教授は、この状況を次のように分析している。
「日本の年配の世代は、ほとんどが反射的に平和主義で、軍事的なものは拒否される。戦争を経験した世代は徐々にいなくなりつつあり、戦後の雰囲気の中で育った彼らの子供たちも主観的に戦争は恐ろしいもの、許されないものという印象を持っている。 だが、今の若い人たちにはそのような意識はない。自衛隊への入隊希望者は若い人たちの間ではいまのところ少ないが、経済的インセンティブとPRやプロパガンダの両面から十分な資源を投入すれば、この問題は解決できると思う」
ネリドフ氏は、日本は今後数年間で防衛費をGDPの2%に引き上げる方針であることから防衛省の資金が増えること、さらに、人的資源を必要としないハイテク兵器の重要度が増していることに注目している。
「そして、もう一つ。東アジアで軍事衝突が起こった場合、日本は単独で戦う必要はなく、少なくとも米軍と、場合によっては他国の軍隊と一緒に戦うことになる。戦後しばらくの間、自衛隊勤務は、米軍や他国の軍隊での勤務のように名誉あるものではなく、尊敬に値する職業ではないと思われていた。だが、最近の世論調査では、一般の日本人の自衛隊のイメージはかなり改善されている。イメージは良くなったが、日本の人口は確実に減少しており、どちらかというと自衛隊には、自衛隊で何らかの技術を身に着け、その後民間で仕事に就きたいと考える若者たちが入隊している。 防衛省にもっと予算が割かれれば、自衛官になるのももっと魅力的に映るかもしれない」
ハラスメントに関してはネリドフ氏は、これは西洋の歴史で、平等の権利などを求める闘争だと位置づけている
「ハラスメントの話題は、日本ではようやく最近になって取り上げられ始めた。もちろん止めさせねばならないものだが、これが起きているのは何も自衛隊内に限らず、多くは市民社会の中で発生している」
国連の最新報告書『世界人口推計2024』によれば、東アジアの先進3カ国、日中韓は今後数十年の間に人口問題という大きな課題に直面する。現在14億1900万人と推定されている中国の人口は、2100年までに6億3300万人まで減り、 韓国も2100年までに現在の5200万人から2200万人にまで減少しうる。国連の予測では日本は現在の1億2400万人が2100年までに7700万人にまで減る。いずれにせよ、国連の予測では中国、韓国、日本は人口のピークをすでに過ぎ、もはや増加しない。この先、問題となるのは人口減少をどの程度遅らせることが可能かという点になる。