最近まで、日本製の殺傷兵器の輸出は禁止されていた。しかし昨年、政府は防衛装備輸出規定を改定し、外国企業からライセンスを受けて国内で生産した防衛装備品を、ライセンス元の国に輸出できるようにした。PAC-3は米国のライセンスに基づき日本で製造されているため、米国への輸出は新規則に従ったものとなる。
ロシア外務省はこの取引を敵対的な行為とみなし、日本のミサイルが最終的にウクライナに送られること懸念した。とはいえ2023年12月には、日本政府はバイデン米大統領の要請により、ウクライナに防衛装備品を直接輸出しないことを条件に、これらのミサイルの米国への売却を許可していた。
ロシアの懸念はどの程度現実的なものか、この取引は米国のウクライナへの軍事支援を拡大するためのものなのか、それとも他の目的があるのか。軍事専門家で、ロシア経済大学政治社会学部学部長のアンドレイ・コシュキン氏が「スプートニク」の取材に応じ、考えを語った。
「発表された契約金額から判断すると、ウクライナに日本のミサイルが渡る可能性は低い。だが、日本からの供給量によって、米国がウクライナに渡すミサイルの数が決まる。 現在、ミサイルの主な需要はウクライナからだ。欧州での供給資源が枯渇している状況で、米国はインド太平洋地域のパートナー、特に日本、そして韓国、オーストラリア、ニュージーランドの生産能力を利用するつもりだ。これにより、米国は中国とロシアに対抗するNATOのアジア版を作ろうとしている」
コシュキン氏は、7月28日に東京で開催された外務・防衛閣僚会議「2プラス2」で、日米両国が自衛隊と在日米軍(約5万人)の指揮統制の連携強化のため、在日米軍を統合司令部として再編することに合意したことについても言及した。
「こうすることで、米国は日本はより管理しやすくなるし、日本は米国に依存することになる。また、米国は経済的手法でコントロールできるよう、日本の軍産複合体にも目をつけ、自国の必要性に応じて利用しようとしている。これはまだ試験的なものだが、日米は先進中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の共同生産を開始することも計画している。つまり、ロシアの懸念には理由がある。米国は日本を徐々に軍事的に活発化させ、日本を東アジアの前哨基地にしようとしている。これがアジア太平洋地域に紛争状況を生み出している。米国は国防文書で中国を『刻々と深刻化する脅威』と呼んでいるが、このことは中国だけでなく、ロシアにとっても脅威だ。米中関係はもはや単なる競争関係ではなく、対立関係にある。我々は今、地政学とグローバル市場の法則の対立を目の当たりにしており、それはすでに新たな冷戦へと向かっている。 そしてどんな冷戦も、武力による戦争の危険性をはらんでいる」