【視点】日本 国の借金は膨大 だが、国民一人当たりの借金はそれほどでも

日本の政府債務は6月末に過去最高の1300兆円(約8兆9200億ドル)に達した。35兆ドル近い米国の債務には遠く及ばないが、OECDによれば、2024年初頭のGDP比では米国が122.9%、日本は254.5%である。さらに、第3四半期だけで日本の政府債務残高は13兆8800億円増加した。共同通信によれば、これは継続的な物価上昇による家計への補助金支出の増加によるものだという。
この記事をSputnikで読む
膨大な政府借金は日本経済の健全性にどのような影響を与えるのか、また一般市民の生活に影響を与えるのか、スプートニクは経済・金融の専門家に尋ねた。
高等経済学院経済学部のアレクサンドル・アブラモフ教授は、次のような見解を表している。

「日本が膨大な借金を抱えていることは誰もが知っている。だが、日本が負債を返済し続け、多額の金融資産を持っていることを考えれば、国の借金額は驚くべき印象を与えているかもしれないが、それは決して壊滅的な状況ではない。通常、債務が増えれば、その分だけ長期的にはGDP成長を阻害する。だが日本の場合、国家予算が長い間、国の金融システム全体を支えてきた。これは特異な状況であり、歴史的現象と言ってもいい。日本は一時期、金融界でも、金融界以外でも家計においても不良債権の問題に直面した。人々は負債を抱え過ぎたため、その結果、支出を非常に抑えるようになった。このため、日本の予算は何十年もの間、内需活性化のツールとして機能していた。そうでなければ、経済はさらに低い成長率に落ち込んでいたはずだ。こうして、日本は先進国の中でも最大級の公的債務を抱えることになった。

だが、日本国はそれを返済している。文字通り近年、日本はデフレを克服し、市場の資産負債を多かれ少なかれ再編成することで、ビジネスに成長を促し始めた。けれどこれは活性化を伴わないプロセスだ。こうして日本人は今後も債務を減らしていくだろう。まとめると、低金利の維持、借入、家計支援など、こうしたすべての措置はある程度プラスに働いたと言える。日本は回復し始め、インフレが長年のデフレに取って代わり、需要が戻ってきた。これは日本の状況改善のチャンスだ」

国際エコノミスト連盟のメンバーでありデジタル変革・経済動向調査研究所のイーゴリ・ディデンコ所長は次のように見ている。

「日本の負債額は約9兆ドルと推定されているが、日本政府によれば、国債の保有者は主に在留邦人であり、負債の半分は日銀が保有しているため、状況はコントロールされている。またこの数字は40%から50%の幅があるが、これはつまり、日本は、ある程度、国家が国民に対して負債をおっていて、それを返済しなければならないことを意味している。傾向としては、先進国の債務は増加しており、米国でも、欧州の主要国、そして日本でも同じ傾向がみられる。遅かれ早かれ、これは世界経済全体の状況に重大な影響を及ぼしうるが、今のところ、少なくとも今年はそうした兆候はない。もちろん、キャリートレードの仕組みの変更や、それに伴う株価の下落など、直近の出来事は日本経済に影響したが、日本の国民一人当たりの借金を見れば、他の多くの国と比べてその額はそれほど大きくはない。日本のインフレには奇妙な意味合いがある、株式市場が先行き不透明な状況において、日本人は効率、倹約に十分に長けており、多くの東アジア諸国と同じように貯蓄は大きい。

だから、日本人は政府の借金の増加を、少なくとも日常的には感じていない。この点では、同じく制御不能なほど膨れ上がっている米国の政府債務の方が、世界でははるかに懸念されている。周知のように、日本も中国も米国債を大量に保有している。全体的に状況を見た場合、条件付きでいえば、すべての国がお互いに債務を背負いあっていることになる。グローバル債務というものもある。コロナのパンデミックが起こる前、世界の負債総額は年間GDPの3.5倍以上だった。つまり、全世界が将来世代に対して、世界のGDPの3.5倍の債務を負っていた。今、この数字はさらに大きなっている。これは日本一国だけの国家債務よりもはるかに深刻な懸念を引き起こしている」

コメント