【視点】防衛費増額でも国防能力に効果の手ごたえはでない

日本の防衛省の要求によると、2025年度の防衛予算は現在の7兆7000億円から8兆4000億円と、過去最高額に達する可能性がある。
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この予算には、主に情報と、北朝鮮の早期ミサイル発射の情報を収集するための衛星コンステレーション構築費用が初めて含まれると報じられている。予算はまた、ドローンの購入や海上自衛隊のIT・サイバーセキュリティ部隊の設立にも使われる。
ロシア科学アカデミー、中国現代アジア研究所のコンスタンチン・コルネーエフ上級研究員は、防衛費を順次増額する日本の計画は防衛力増強の手ごたえのある効果は出さないという見方を示している。

「日本が直面している脅威を現実的に評価するならば、日本は現在、『非友好的』な国々に周りを取り囲まれている。関係が円滑とは言えない北朝鮮、中国に加え、今や関係が修復不可能なほど悪化しているロシア、さらにこれら諸国と韓国との間には領土問題もある。これに露中が地域での軍事的プレゼンスを高めていることを考えると、これらすべての脅威に適切に対抗するには、まったく異なるレベルの、はるかに多額の軍事予算が必要となる。

だが! 日本はさまざまな要因により、大幅に増額することはできない。人口動態の問題もそれを邪魔している。 人口全体に占める若者の割合は低下しており、若者も自衛隊に入隊したがらない。日本の軍産複合体も本格的な軍隊が要するだけの武器、軍事機器、装備は生産できない。これらすべてを海外から購入することは可能だが、時間も費用もかかる。問題は、日本がそれをする能力があるか否かではなく、それをする心づもりがあるのかということだ。 あまりにもコストがかかりすぎるからだ。

このことから私は、日本の防衛予算を増額しても、この地域のパワーバランスが変わるとは思わない。日本と中国の軍事力を比較すれば、答えは明らかだ。日中両国の国防力を表面的に分析するだけでも、『米国の核の傘』がなければ、日本一国では中国の軍事力に対抗できないことがわかる」

国立サンクトペテルブルク大学、東洋学部のエヴゲーニー・オスマノフ准教授は、日本が防衛費を増額しても、地域における軍事バランスには影響しないと指摘し、その理由を地域の全ての国で軍事費の増額が行われているからだと説明している。

「米国があの手この手で日本に防衛費増額と軍事化を迫っていること、そしてそのために北朝鮮の脅威が利用されていることを考慮せねばならない。日本は米国にとってこの地域における信頼できる重要な同盟国であるが、米国にとって軍事的に弱い同盟国ではなく、強い同盟国でなければならない。インド太平洋地域は米国にとって重要で、そこでのポジション強化に最大の尽力を傾けており、これに日本も利用したい。まさにこうした条件下で、日本は米国にとっては韓国より重要なのだ。韓国は北朝鮮や中国に隣接しており、戦略的な観点からすれば、日本より領土は脆弱だ。日本には国境を接する国はないため、領土と諸島は橋頭堡として利用できる。米国は、今や中国が第一のライバル国であることを隠しておらず、核戦略さえも中国に方向転換しようとしている。有事となれば、日本が紛争で決定的な役割を果たすことはないのは明らかだ。だからこそ、日本は進んで早期警戒とミサイル迎撃の両方、ドローンなど、防衛省の来年度予算に含まれるその他の技術の獲得に熱心なのだ」

防衛費増額を賄うためには、日本は増税を迫られるだろうか?この問いに二人の専門家は以下のように答えている。

コルネーエフ氏:「日本は巨額の国家債務を抱えてはいるが、その90%以上は国内債務だ。これは選択の問題で、増税をせずに支出を増やそうとすれば、国家債務はより迅速に膨れ上がり、国内で債務不履行を起こすリスクが生じる。遅かれ早かれ、このお金を渡す相手がいなくなる時が来るだろう。高齢化が進み、日本の大企業が世界市場での地位を失いつつあることを考えると、日本の経済力は低下しつつある。このプロセスは急激には生じないが、着実に進んでいる。間接税の増税は可能だが、直接税の増税に踏み切ることは大衆には歓迎されないため、首相の座を狙う候補者の中で、これをやろうとする人は出てこないだろう」

オスマノフ氏:「支出の一部は税金で賄われるかもしれないが、日本国民の莫大な預金額が凍結解除される日も来るはずだ。小泉首相時代に郵政改革が行われたのにもちゃんとわけがある。巨額の資金が蓄積されている郵便貯金。軍事費など、政府の必要経費にこの『動かない資金 』を回すためだ。加えて、日本は常に財政黒字国で、これらの資金はどこかに投資せねばならない。最近、日本政府は2025年度には日銀と地方自治体の基礎的財政収支が約8000億円の黒字になる見込みだと発表している」

2024年の日本の国防費は2023年の世界10位から上がり、8位を占めた。世界最大の軍事費リストでは米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアが上位を占めている。
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