【視点】クアッドの共同監視活動は予期せぬ衝突のリスクを伴う

米国、オーストラリア、インド、日本の4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」の首脳らは、先日米デラウェア州で開催されたサミットで、インド太平洋地域における沿岸警備当局による共同監視活動に合意した。この『シップオブザーバー(QUAD-at-Sea Ship Observer Mission)』ミッションは、相互運用性と海上安全の向上を目的としている。
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最初の海洋監視のミッションは2025年に米沿岸警備隊の巡視船で行わる予定で、インドと日本の沿岸警備隊、オーストラリアの国境警備隊の各職員が同乗する。このミッションでは、特に南シナ海とその周辺海域に焦点が当てられる。同海域の多くの島々に対して中国やブルネイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンがそれぞれ領有権を主張している。
クアッドの共同声明では、中国について直接の言及はなかったが、東シナ海と南シナ海の状況について「深刻な懸念」が表明されており、南シナ海における「危険で攻撃的な行動」を非難しているが、国名の名指しはされていない。
この取組みに対する中国の反応は予想通りだった。「安全保障問題で中国を封じ込め、経済問題で中国を排除しようとする小さなサークルは、『自由で開かれたインド太平洋の実現』という目標を声高に宣言しながら、実際には、時代の流れに逆行し、地域諸国の意向に反し、地域問題への露骨な干渉を行っている」と中国タブロイド紙『環球時報』は報じている。
この地域におけるそのような監視活動はどれも予測不可能であり、予期せぬ紛争を招くリスクを伴い、必然的に望ましくない緊張の高まりにつながる。共同監視活動の影響について、ロシア国際問題評議会事務局長のアンドレイ・コルトゥノフ氏はスプートニクにこのように語った。
‍「このミッションにはインド太平洋地域の同海域にアクセスできる国だけでなく、この地域の外に位置する国も関わっており、それが状況を複雑にしている。 国際法を厳格に遵守し、すべての航行が国際水域で行われる限り、監視活動そのものは違法ではない。ロシアと中国も太平洋の西や北で監視活動を行っているが、定期的ではない。もちろん、外交レベルで予期せぬ衝突や紛争のリスクの軽減について合意するのは賢明だ。しかし、ミッション参加国の優先順位はそれぞれ違うと考えることができる。米国は中国を封じ込めることに関心があるとしたら、例えばインドは、南チベットの国境地帯を原因とした紛争が続いているにもかかわらず、中国とインドの共通の利益のほうが両国の意見の相違よりも重要だと考えている。今はまだ、共同監視活動がどのような形で、どれくらいの規模や頻度で行われ、監視員がどのような装備をするのかといった詳細がわからないため、マイナス面について判断するのは難しい。しかし重要なのは、この共同ミッションがクアッドの軍事同盟化にどの程度貢献するのかということだ」
なお、クアッドの4カ国のうち3カ国が近い将来に選挙を控えているため(日本は9月、米国は11月、オーストラリアはおそらく2025年5月)、4カ国が今後もこのメカニズムの枠内で緊密に協力し続けるかどうかはわからない、と「NIKKEI Asia」は報じている。
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