石破氏は、日米安保条約は時代とともに進化しなければならず、日米は対等なパートナーとなるべきだとの見解を示している。同氏はまた、中国、ロシア、北朝鮮の「核連合」に対する抑止力として、米国の核兵器の共有やアジア地域への持ち込みの検討を提唱した。
米国は、日米安保条約の路線を日本の独立性を高める方向に変更するという考えを歓迎していない。ロシア高等経済学院世界経済・国際政治学部のオレグ・パラモノフ准教授はスプートニクのインタビューでこのような見方を示し、次のように語った。
「この種の発言は軍事問題に焦点を当てた石破氏の個人的見解を反映している。これは先ず、日米安保条約の路線を日本の独立性を高める方向に変更しようとする試みと関係している。日本の新たな防衛大臣の中谷元氏もこの課題の作成に参加した可能性がある。一方、米国はこの考えを歓迎していない。なぜならこれは在日米軍の地位という米国にとって非常にデリケートな問題に関係しているからだ。そしてまた、日米関係においては常に米政府が課題を提起しているからである」
パラモノフ氏はまた、NATOに代わる「準同盟」というシステムがうまく機能しているため、アジア版NATOの実現は難しいとの考えを示している。
「それは後方支援、情報交換、相互アクセスなどに関する協定だ。『AUKUS(オーカス)』(米英豪の安全保障枠組み)には現在、日本を含む他の国も参加できる2つ目のプラットフォームが誕生した。さらに、意思決定においてコンセンサスが必要な従来のNATOは、重大な危機の際にどこかの国が反対した場合、すでにそれほど効果的ではないことを一連の出来事が示している。『冷戦時代』の同盟は時代遅れとなった。仮に日本が攻撃を受け、米議会が米国の参戦に反対したとしたら、どうすればいいのだろうか?『安全の保証』ではなく、安全保障分野における広範な協力が軸となる所謂『準同盟』のシステムは柔軟であり、現代の地域課題によりよく適合している。NATOは、安全保障の所謂『グレーゾーン』から脅威が発生するその地域課題に、あまり上手く対応することができない。準同盟はまた、迅速な行動が必要とされる状況にも適している。したがって、本質的にアジア版NATO構想はすでに実現されていると言うことができるが、従来のNATOに関する大規模なアップデートが加えられている」
広島市の松井一実市長は、石破氏が米国の核兵器を日本で運用する「核共有」について議論する必要性があると主張したことに対し、否定的な見解を示した。松井氏は「非核三原則を守ることは、被爆者のこんな思いを他の誰にもさせてはならないという願いを原点にしたとき、譲れない一線だ」と述べた。
核兵器は日本やその同盟国、そして米国にとってあまりにもデリケートなテーマであるため、核共有の提唱はあまりにもリスクが高い。パラモノフ氏はこのような考えを示し、次のように語った。
「日本が核保有国となるための前提条件は、現時点では見当たらない。これは世界の核不拡散体制に対するあまりにも深刻な挑戦となるだろう。これに関して議論が始まるかもしれないが、この問題は米大統領選挙の結果にも左右される。少しではあるが、影響を受けるだろう。トランプ氏が勝利した場合、同氏が過去に日本も核兵器を持つことができると述べたことを考えると、このテーマを巡って何らかの盛り上がりが生じるかもしれないが、それ以上のことは起こらないだろう。なぜならその場合、日本は自国の同盟国やパートナーを失う可能性があるからだ。ASEAN 諸国にとって、核のテーマは非常に大きな問題だ。なお、日本は原子力潜水艦に関心をもつかもしれない。もちろん、これは平和利用の原子力ではないが、軍事利用の原子力でもない」
石破氏の提案はきわめて過激に見えるが、与野党、そして日本国民の支持を得ることができるだろうか?NATO自体は、「アジア版NATO」の創設について議論するのは時期尚早だと考えているようだ。