【視点】石破首相の所信表明、重点はどこに? 露専門家が語る

石破茂首相は国会での所信表明演説で、防衛力強化や政治への信頼回復、「一人一人が豊かで幸せな社会」の構築を約束した。
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露モスクワ大アジア・アフリカ諸国大学のアンドレイ・フェシュン副学長は、石破首相の演説について、非常に楽観的かつ経済に重点を置いたものだったと指摘する。

「石破首相の演説は、経済問題の解決の展望について重きが置かれていた。社会全体の関心事である経済問題に集中したのは、合理的な戦術だった。こうして、反対勢力に批判する隙を与えなかった。解散総選挙について発表した際には、野党の批判にさらされたが、今回は経済と関連する問題が支配した。つまり、これらは彼を支持した地方が聞きたかったことであり、補助金や交付金を国会で通すとの宣言だったのだ」

フェシュン氏は「石破首相は地域の発展が経済成長と国全体の発展の主な推進力であると考えている」と続ける。

「首相は地方創生交付金の倍増を掲げている。これに関しては国会で難関に直面しそうだ。財源が足りないと、各方面から反発があるはずだ。また、1人あたり県民所得が最も低い沖縄県への支援などにも触れ、全国の平均最低賃金を1500円にする計画にも言及した。ここでもどこからお金を持ってくるのかは不透明だ。現段階では大枠でしかなく、今後具体的にどういった案が出て、国会で審議されるかを見ていく必要がある」

日本にとっての「脅威」について石破首相は、厳しい表現は避け、外交的な言葉を使ったとフェシュン氏は指摘する。

「外交政策については石破氏がこれまで語ってきた『アジア版NATO』に触れなかったことに驚いた。憲法改正には少し触れたものの、自衛隊を『国防軍』として憲法に明記するという具体的な主張もなかった。中国やロシア、北朝鮮の脅威に対する防衛力強化の必要性を訴えるのかと思ったら、中国との対話を行いつつ、同志国を増やして日米同盟をもとに地域の平和と安定を目指すという外交的な表現を使った。ロシアに関しては、領土問題を解決して平和条約を結ぶという、新首相が就任した際に儀式的文言のように発するフレーズを述べたが、これは予想通りだった」

また、防災対策の強化についてフェシュン氏は「南海トラフ巨大地震といったリスクに備えるうえでも重要」と指摘した。
一方、演説で女性活躍に触れた石破首相だが、閣僚20人中女性は2人のみ。第二次岸田内閣では5人だった。これについてフェシュン氏は「石破首相は男タイプの政治家」と述べ、演説で約束した女性活躍の機会が実現されるかどうかは、時間が経てば分かるだろうと指摘した。
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