ASEAN諸国内では、ミャンマー情勢とその平和的解決へのアプローチについてのコンセンサスは得られているのだろうか。ASEANはこの間、地域の安全保障体制における中心的な役割を失うことを恐れ、紛争の解決を模索してきた。
この問題について、モスクワ国際関係大学ASEANセンター所長を務めるエカテリーナ・コルドゥノワ准教授は、スプートニクからの取材に次のように答えている。
「形式的にはコンセンサスはすぐに構築されていた。それがミャンマー情勢に関する『5つのコンセンサス』である。これに、ミャンマーをも含むすべてのASEAN加盟国が同意した。こうしたデ・ファクトの他に、むろん、意見の相違はある。タイ、ラオス、ベトナムはよりソフトな立場をとり、インドネシア、マレーシア、フィリピンはミャンマーの軍事政権により強硬な姿勢をとるよう要求している。加盟国の内政不干渉の原則が妨げとなって、ASEANはより断固とした行動がとれないのであろうか? これは複雑な問題だ。外交以外の方法で情勢に影響を及ぼすことは確かに制限がある。だが、ミャンマーに対して、この原則に違反すれば、パンドラの箱を開けることになりかねない。 一般的に言えば、いくつかの国、特にタイは軍事的にも民間的にも、また人道支援の面でも、かなり集中的な接触を維持している。ASEANが、あらゆる問題にもかかわらず、ミャンマーとの関わりを重視しているという事実がすでに、外部からの支援があるという大きな要因となっている」
ロシア科学アカデミー、中国現代アジア調査研究所、ベトナムASEAN調査センターの上級研究員クセーニャ・エフレモワ氏は、ミャンマー代表がASEANサミットに出席したという事実自体が特筆すべきことであり、双方が相互理解に達したことを物語っている可能性があると見ている。
「ラオスで開催のASEANサミットにミャンマー外務省のアウン・チョウ・モー次官が参加したことは、双方に2021年4月に調印された『5つのコンセンサス』の実現に向けた動きがあったことを示している。ASEAN加盟国の間では、ASEAN外のパートナー、特に米国が主張するように、ミャンマーに圧力をかけることは逆効果だという相互理解がある。ASEANの任務は流布している説とは異なり、ミャンマーの現政権に民主変革を迫ることではなく、国民和解プロセスを再開させることにある。日本はその共同スポンサーとして伝統的に協力を行ってきた」
コルドゥノワ准教授は、「日本は他の、いわゆる『集団的西側諸国』の中ではミャンマーに対してはより建設的な姿勢をとっている。日本独特のアプローチの仕方というのは、紛争のあらゆる当事者とコンタクトをとるというものだ。公式筋ともとる、また反体制派とも、様々なチャンネルをとおしてとる」という見解を示している。
エフレモワ氏は、ミャンマーの情勢は日本のこの国に対する特別な姿勢をトーンダウンさせたが、かといって、全面的な断絶には至らなかったと見ている。「日本はミャンマーとの歴史的なつながりがあるため、ネピドー政権への交代で優先的なパートナーシップを凍結はさせたものの、全面的な国交断絶はしなかった。丸山市郎駐ミャンマー大使の離任後、新任の大使を任命しなかったことは、二国関係のレベルを下げはしたが、それでも臨時代行大使のレベルで維持はされている」