解散前の自民党の議席は256、公明党は32だった。野党は190議席で立憲民主党が99を占めていた。衆議院の過半数議席数は233だが、法律可決を円滑にする絶対安定多数は261議席。石破首相は10月14日の記者会見で自民党にとって今回の選挙が「非常に厳しい」ことは認識していると語っている。
自民党が実際に大半の議席を失った場合、どういう展開になりうるのか、これが党の政策と首相にどう影響しうるのかについて、スプートニクは複数のロシア人専門家に意見を尋ねた。
モスクワ大学、アジア・アフリカ諸国大学のアンドレイ・フェシュン副学長は自民党の立場の弱体化は間違いないものの、問題はどの程度まで弱体化するかにあると語っている。
「石破内閣は、この弱体化がそれほどひどくはならず、いつもの公明党との連立によって、自民が最終的にそう多くはないものの、得票で優位に立つことを期待している。しかし、自民党の石破氏に対する態度が一律ではないことを念頭に置く必要がある。このため、野党が衆院で与党が十分な票数を集めていないことを理由に、首相交代問題を発案することも考えうる。最近の時事通信の世論調査で、新内閣への支持率がわずか28%だったことから判断すると、石破氏の政権デビューは低調と言わざるを得ない。彼は選挙前に新政策の選択について全党的な議論を行うと約束していたが、まともな議論は行われず、実際には国会の公聴会での質疑応答にとどまった。これで野党は強力な切り札を手にしたことになる。だから、石破首相の先行きはかなり不明瞭だ。困ったことに彼は、内政でどのような目標を追求するつもりなのか、いまだに決めていない。夫婦別姓問題が、この国にとっての最重要問題だとは本気で思えない。明確で真剣な行動計画がないことが、彼の大きな間違いだ」
ロシア科学アカデミー、中国・現代アジア研究所、日本調査センターの上級研究員のコンスタンチン・コルネーエフ氏は自由民主党が負ける、あるいは大幅に票を失うことを示す兆候は一切見られないとして、次のように語っている。
「おそらくは自民公明が多少のプラスマイナスはあるものの、解散前と同じ数の議席を確保するだろう。最悪の場合でも他の与党と交渉し、連立を組もうとするだろう。だが、選挙結果がいずれの方向に揺らごうが、誰が首相になろうが、、内政ではなんらかの変動はありうるとしても、外交では今までどおり、日本の安全保障を保障する形としての米国との協力強化路線が維持される。これを左右するのは国益であり、政党の従属は何の役割も演じていない。石破氏の弱みは家元の自民党内で絶対的な支持を得ているわけではない点にある。したがって、2006年から2012年まで続いた、首相が次々と交代する『回転ドア』式エポックの第2ラウンドが始まる可能性が高い。しかし、もし自民党が大差をつけて勝利し、石破氏の立場が強まるなら、石破氏が何らかの目標と解決策を打ち出すことが予想される。だが、今のところ、彼は慎重な姿勢をとっている」
モスクワ国際関係大学、東洋学科のウラジーミル・ネルドフ准教授は衆院選にセンセーショナルな結果は一切期待していないと語っている。
「先日、話をした日本人の専門家らは、様々な困難はあっても結局、自公の政権は維持されるとみていた。おそらく、票の一部は失うだろうが、大災難になるようなものではないだろう。それは、野党のほうも細分化されているからだ。最大与党は戦略的観点からでは自民党に真逆の立場をとっている。大衆的な右派政党の「日本維新の会」、中道左派の立憲民主党がそれにあたる。私としてはこの選挙でセンセーショナルなことは何も起きないと見ている。まぁ、例えば、維新が自民党と連立を組むとか、そういった何らかの変化はあるかもしれないが、この段階でそうした予測は時期尚早であって、それが起きるとしてもこの選挙の後ではないと思う」
選挙活動期間があまりにも短いために、自民にも野党にも、効果の高いアジテーションを行うことも、国の未来について討論を展開するチャンスもない。