高齢化は世界的な問題であり、特に先進工業国にとっては典型的な問題であり、労働力不足や社会的コストの増加につながっていると社会学者のセルゲイ・ベラノフスキー氏は指摘し、次のように語った。
「年金受給者層が多いため、年金を支給したり、健康保険の負担金を交付するための税金の支払いに対する現役世代の負担が大きくなっている。一方、質の高い生活や発達した医療により、日本の高齢者は定年後も働き続けることができる。国は年金受給者に対し、仕事を続けて税金を納めるよう奨励している。そのおかげで、私の知る限り、日本は働く高齢者数が世界で一番多く、労働力人口全体の13.5%を占めている」
一方、深刻化する労働力不足を高齢者の働き手のみで補うのは、彼らの年齢や健康状態などを考えた場合、不可能だとの見方をベラノフスキー氏は示している。
「この現象の影響を緩和するための措置には、外国人出稼ぎ労働者の誘致や定年退職年齢の引き上げ、また人口の受動的な部分の『活性化』、つまり全人口グループにおける雇用の増加が含まれる。これは失業者だけでなく、働いていない女性、ひとり親、流れ作業や肉体労働に強い不快感を抱いているアルバイトやパートとして働いている若者など、その他のカテゴリーの労働力人口のことだ。私の意見では、流れ作業や肉体労働といった仕事は不当に単純労働とよばれることがあるため、若者にとって社会的評価が高く、魅力的な仕事とはみなされておらず、担い手の確保が難しくなっている」
外国人労働者の国内労働市場への参入を巡っては、日本政府はかなり長い間この案に抵抗していたが、人口動態上の負担が増大するにつれて受け入れるようになったとベラノフスキー氏は指摘し、次のように語った。
「おそらく、日本の労働者と出稼ぎ労働者間の大きな技能格差を懸念して、日本は『教育移民』に注目したと思われる。その手段となるのが技能実習制度であり、それは組織された労働者募集の経路となる。また日本の大学は、海外からの若い留学生を積極的に受け入れている。日本の大学を卒業した多くの外国人は、日本で実務経験を積んだり、日本に残ることに反対していない。そして日本はこのようにしてスキルや知識を持った労働者を獲得している。一方、外部労働力移動に関する問題もある。 外国人労働移民の数が一定の限界値を超えると、民族紛争や反社会的な行為などによって社会的緊張が生じるおそれがある」
ベラノフスキー氏は、現地に住む人々の高齢化の影響を和らげる別の方法として、生産工程の自動化や、さまざまな活動分野でのロボット及び人工知能(AI)の導入を挙げている。しかし、これはすでに日本、ドイツ、米国、その他の多くの国で実施されている。
「これらによって作業速度と精度が向上することで生産性が高まる。したがって、ロボット化は一定のレベルで労働力の一部を浮かせることができる。一方、浮いた労働力がより高度な技能を必要とする分野にどれほど迅速に移動できるかという問題は、未だ解決されていない」