【視点】これからの原子力産業は経済性と安全性のバランスが不可欠

12月7日、中国電力は島根原子力発電所2号機(出力82万キロワット)を再稼働させた。 島根原発2号機の再稼働は全国で14基目、沸騰水型軽水炉(BWR)としては女川原発に次いで2基目となる。
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島根原発2号機は1989年2月10日に運転を開始。2012年1月に定期検査のため運転を停止した。2021年6月、島根原発2号機は原子力規制委員会の審査に合格し、松江市、出雲市、安来市、雲南市からの再稼働の容認を経て1年後、島根県知事が島根原発2号機の再稼働に同意した。
日本はなぜ原発の再稼働に踏み切ったのだろうか?また、この決定にリスクはあるのだろうか? 科学とビジネスのポータルサイト「Atomic Energy 2.0」の編集長兼創設者であるパーヴェル・ヤコブレフ氏がスプートニクの問いに答えた。
‍「福島第1原発事故以前、日本のエネルギー供給における原子力利用の割合はかなり高く、何十年もの間、この産業の技術開発に多くの労力と資金を投じてきた。日本人は、核燃料の再処理を研究し、『高速炉』計画を策定した。そうした意味では、日本は原子力産業における世界のリーダーの一国だった。原子力発電が停止していた間、日本は電力を供給し続けることができた。しかし、その対価は非常に大きかった。これは、貿易赤字の拡大と電気料金の高騰に反映されている。原子力発電所の停止により、電力は原材料を輸入に依存する火力発電によって生み出された。さらに、火力発電を優先したことで、日本にとっては温室効果ガスの排出という環境問題が頭痛の種となった。そして13年たった今、世界市場での原材料価格の変動や物流の問題により、日本経済、産業界、さらには国民までもが、ますますエネルギー安全保障の問題に直面している。日本が輸入資源に依存していることを考えれば、原子力発電が日本のエネルギー戦略にとって必要不可欠な要素であり、今後もそうあり続けることは道理にかなっている。 加えて言えば、停止中の原子力発電所の運営もコストがかかり経済的にマイナスだ。原子力規制庁によれば、現在、エネルギーミックスに占める原子力の割合は10%ほどだ。日本政府は2030年までに原子力の発電割合を20~22%に拡大する目標を掲げている」
10月29日、沸騰水型軽水炉(BWR)の女川原子力発電所2号機が起動した。一方、運転開始から1週間も経たない11月3日、機器の不具合により停止した。 原子炉内の中性子を計測用機器が動かなくなるという不具合が生じた為だ。ケーブルにつなげた機器を原子炉内に通す案内管の接続部のナットが締め付け不足により緩み、ナットと管が外れたのが原因だという。東北電力は、事象が発生した原因および再発防止対策を説明し、今回の事象による影響はないと社会を安心させた。
あらゆる電力発電所にリスクは存在するが、原子力発電所のリスクはとりわけ高い、とヤコブレフ氏は続ける。
「日本の原子力の利点は、常に厳重な管理下に置かれていることだ。原子力産業における安全システム事業が占める割合は30~40%に達している。したがって、製造コストは高くなり、運用も難しくなるが、日本ではとりわけ、あらゆるリスクを最小限に抑える努力がなされている。さらに、日本では原子炉の再稼働に最も厳しい安全基準が設けられており、原子炉の近代化に多額の投資が行われている。BWRに関しては、これは第2世代の原子炉であり、建設された当時は経済的合理性が最優先されたのだろうが、現在の原子力産業では経済性と安全性のバランスをとる努力がなされている」
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