【視点】日本製鉄とUSスチール バイデン氏の買収計画禁止命令に提訴

日本製鉄と米国USスチールは、両社の合併取引を禁止したバイデン政権を相手取り、共同で訴訟を起こした。
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日本製鉄はバイデン大統領の承認を得るために、今後10年間は米財務省の特別委員会の承認なしには鉄鋼工場の生産能力を削減しないという追加提案を提示した。だが、それは意味をなさなかった。同委員会は国家安全保障と貿易の専門家から構成されており、彼らはこの取引が米国の国家安全保障にリスクとなりうると判断した。
ロシア戦略調査研究所の専門家でエコノミストのミハイル・ベリャエフ氏は、この状況について次のように語っている。
「大企業の吸収合併、このカテゴリーに両社も完全に当てはまるのだが、その歴史にはシナジー効果という概念がある。企業が大きくなればなるほど、資源、自己資金、借入金を使っての経営が容易になる。そして、USスチールと日本製鉄の両社がこれほどまでに合併に向けて懸命に努力していることを考えると、両社とも第一に、特に今の地政学的状況で競争力の向上に期待を抱いていることを意味する。つまり、合併は生産能力を上げることだけでなく、顧客と販売市場の拡大を意味する。 だから、USスチールと日本製鉄の合併が新たに強力な競争相手を生むとわかっている企業は、あらゆる手段でそれを阻止しようとしている。また、日本側が国内経済を活性化させるために、トランプ次期大統領が国内経済を奮い立たせようと高関税で脅しているのを回避しようとしている可能性もある。日本の鉄鋼生産量は国内需要をはるかに上回っている、だから、日本側は市場を維持し、輸出することに非常に関心がある」
ベリャエフ氏は、両社の勝訴の見込みについて語るのは時期尚早だが、M&A(合併・買収)でどちらかが敗者になることはないと考えている。
「多くの国々は、特定の基幹産業に外国資本が入り込むことは、鉄鋼産業もそのひとつだが、国による産業統制を妨げる恐れがあると考えている。それに、外国の投資家や関係者が今現在はあなたのパートナーや同盟国であったとしても、将来、その関係がどのように発展するかは誰にもわからない。各国のM&Aに関する法律にも、戦略的産業における外国資本の割合については決まりがある。つまり、どの産業においても外国資本の割合が大きいと、外部からのショックに弱くなると考えられている。だから、こうしたことは厳しく規制されている......」
米国では、USスチールと日本製鉄の合併に賛成する発言者らが、これは双方にとってメリットがあると指摘している。日本製鉄にとっては、粗鋼生産量を現在の6600万トンから8600万トンへ、さらには1億トンに引き上げるという戦略的目標に向けた重要な一歩となる。一方、USスチールは、最先端技術と技術向上に必要な資金が得られる。現在、ほぼ同等の生産能力を有すなか、日本製鉄はUSスチールの3倍の鉄鋼を生産している。
米国のメディアは、最終決定はトランプ氏の大統領就任後になることを否定していない。以前、トランプ次期大統領は、自身の計画を考慮したうえで、この取引の実現可能性に疑問を呈していた。

「なぜUSスチールを今売ろうとするのか? 関税でより高収益で価値ある企業になれるじゃないか。かつて世界で最も偉大な企業であったUSスチールを、再び偉大な企業へ導くことは、素晴らしいことではないだろうか? すべてはすぐに実現するだろう!」

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」にこのように投稿している。

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