これまでの経過をここで振り返ると、日銀は2016年1月、日本の経済成長を刺激するためにマイナス0.1%の政策金利を決定し、2024年3月までマイナス金利を続けた。2024年、日銀は3月に0~0.1%、7月に0.25%と、2回利上げを行っている。2024年後半の金融政策決定会合では、金利の利上げは見送られた。経済活動を刺激するためのマイナス金利の導入はデンマーク、スウェーデン、スイスも行ってきており、同様に欧州中央銀行も2022年7月まで導入していた。こうした諸国の中では日本は一番最後にマイナス金利を解除している。
露金融サービス会社「フィナム」、マクロ経済分析部のオルガ・ベレンカヤ部長は、日銀の今回の決定は予想の範疇だったと語っている。
「世界の主要中央銀行の金利と比較すると、日本の金利は未だに非常に低い。とはいえ、今回の日銀による利上げは昨年7月以来であり、過去17年間で最高値となった。これは日銀のインフレ加速に対する政策だ。日本の12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.6%上昇して、2年ぶりの高水準に達し、コアCPI上昇率は前年比3.0%台となっている。日銀の物価安定の上昇目標はここ3年では2%が目標値だ。日銀の植田総裁は記者会見で、円安が輸入物価に上昇圧力をかけ続けているが、コアインフレに影響しているのは、国内で広がる一方の賃上げの動きだと指摘している」
厚生労働省は1月26日、2024年の賃金構造基本統計調査の速報値を発表した。一般労働者の平均賃金は33万2000円で、1976年以来最高となった。ベレンカヤ氏は話を続ける。
「日銀の政策金利の引き上げは、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利の段階的な引き下げを背景とした中、円安ドル高を抑制している。さらに、国内の貸付金利の上昇で需要やインフレ圧力は減衰し、企業の賃上げ率も影響を受ける。日銀は長い間、日本のインフレ率があまりにも低水準で移行してきたという理由で超金融緩和政策を行ってきた。だが今、この問題を克服しつつあり、多くのアナリストが考える1%前後の金利、つまり中立的な水準の基準金利に徐々に移行している。とはいえ、我々の見解では、日本は経済成長が鈍く、政府の債務残高がGDP比250%以上と非常に高い。だから、本格的なキーレートの引き上げは難しいと思う」