【視点】米国の自動車輸入関税 日本に回避のチャンスはあるか?

日本は、トランプ米大統領が自動車輸入に25%の関税を課すと脅していることを懸念している。懸念の大きさは、状況を明らかにするために武藤容治経済産業相が訪米を準備している事実が物語っている。これに先立ち、岩屋毅外相はミュンヘン安全保障会議の傍ら、マルコ・ルビオ米国務長官とこのテーマについて意見交換を行っている。
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米国は、日本の自動車メーカーには輸出全体の約3分の1を占める最大の輸出先。また、米国にはカナダやメキシコの工場で生産された日本車も輸出されていることから、関税導入による日本の自動車産業への影響は大きい。野村総合研究所は、この関税が賦課された場合、日本のGDPは2年間で0.2%減少しうると警告している。
トランプ大統領は自動車、鉄鋼、半導体チップ、集積回路、医薬品、木材、その他一部の商品に対する関税引き上げを4月2日から開始する意向を表明しているが、どの国の製品が対象となるかについては言及してない。もし日米が合意できなかった場合、関税引き上げは日本の自動車産業や経済にどのような影響を及ぼすのだろうか?
日本に対する関税引上げは、当然、日本に不利になる。ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所、日本研究センターの上級研究員オレグ・カザコフ氏はスプートニクの問いに次のように答えている。
‍「関税が引き上げられれば、当然日本は被害を受ける。米国内の日本車の販売台数は減少し、米国は自国製品の保護に乗り出すことになるからだ。トランプ大統領がプレーのルールを変え、実質的にパートナーの腕を捻じ曲げているという事実は日本人には心痛だ。これまで日本人が慣れ親しんできた体系的な課題とは異なるからなおさらだ。これは国際貿易の常識から逸脱するもので、日本国内外のビジネス界に不安と緊張を引き起こしている。私が思うに、仮に日本がトランプ大統領と合意に至らなかったとしても、日本の自動車産業や経済が大惨事に見舞われることはない。というのも、日本はすでに中国やASEAN諸国と積極的に交渉し、関係を築いているからだ。確かに、これは日本には不快な挑戦状だが、それでも2つの方向性で解決するだろう。1つはトランプ氏と交渉し、日米貿易収支の是正のために確実な投資を提案し、何らかの譲歩をする。もうひとつは新しい市場と新たなパートナーを模索し、輸出を多角化することだ」
カザコフ氏は、日本がすでに2018年から2019年にかけて同じような経験をしていると指摘している。トランプ大統領は1期目の時も米国への輸入車に25%の関税を課すと約束した。しかしその後、安倍首相(当時)はトランプ大統領と合意に達し、その結果、日本は米国産農産物への関税を引き下げる代わりに、日本車への追加関税を行わせない約束を引き出した。
関税が導入されても日本が受けるダメージはそれほど大きくない。自動車問題に詳しいイーゴリ・モルジャレット氏は考えている。
‍「今、米国市場向けの日本車はほとんど輸入ではなく、米国内で生産されている。 トヨタ、日産、ホンダは米国に自社工場を持っている。現在、日本の大手トラックメーカーのいすゞがサウスカロライナ州に工場を開設する予定で、ここで多くの雇用が創出される。またすでに米国で操業中のトヨタの工場も生産拡大計画がある。米国内のこれらの工場の製品は関税の対象ではない。もちろん、日本から直接輸入されるモデルもあるが、日本の自動車産業を脅かすような大きな問題にはならないと思う。日本車は何十年もの間、米国でトップセラーを誇ってきた。カナダやメキシコからの日本車や自動車部品の輸入は実際に問題になるだろう、だが、トランプのこの性急な発言が必ずしも経済分析に適しているわけではないことを念頭に置く必要がある。日本車への25%の関税引上げは、まず最初に米国のバイヤーに打撃を与える。最悪の場合、日本人は米国での生産を増やし、拡大していく必要に迫られる。とはいえ、日本の米国の経済分野への投資は過去5年間、世界第1位の座を守ってきているため、トランプ大統領と何らかの合意ができるチャンスはある」
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