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【視点】充電なしで50年動作 中国の原子力電池は革命をもたらすか?

中国のBetavolt New Energy Technology社は、充電なしで50年も動作可能な新しいコンパクト原子力電池の量産開始を発表した。スプートニクはこの新型電池の仕組みを調べ、エネルギー分野に革命をもたらす可能性はあるか、原子力電池の使用は人体に安全かついて専門家の見解を集めた。
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新型電池の名称はBV100。サイズは縦15ミリ、横15ミリ、高さ5ミリ。 電池の「中身」であるニッケル63同位体は自然界には存在せず、人工的にしか製造できない。厚さ2ミクロンのニッケル63の薄い板が、それぞれ厚さ10ミクロンのダイヤモンド半導体の間に挟まれた「サンドイッチ」構造で、開発者の弁ではエネルギー密度は従来のリチウムイオン電池の10倍。
モスクワ工学物理学研究所付属レーザー・プラズマ技術研究所のピョートル・ボリシュク計測物理技術問題部部長は電池の開発について次のように説明している。
「こうした電池の開発は常に、二つの問題を解決する必要がある。一つは適切な放射性核種を選択すること、もうひとつはベータ粒子のエネルギーを電気に変換するための半導体の開発だ。放射性同位体の崩壊時に放出されるベータ粒子は、半導体によって電流に変換される。これは太陽電池の光電池の動作原理と似ている」
この原子力電池がエネルギー革命を起こす可能性については、ボリシュク氏はそこまでの評価を下していない。
「もちろん、そんなことはない。ニッケル63とベータボルタ電池の仕組みを利用した原子力電池は、世界中の多くの科学者によって研究されている。米国では、ニッケル63をケースに入れた電池さえ売られている。それを取り出してハンダ付けし、チップに挿入して使うことができる。ロシアでも、このような電池の開発に成功している。特に、ロスアトムの科学部門では、ニッケル63で動く電池のプロトタイプをいくつか作っている」
ボリシュク氏は人体への安全性について次のように指摘している。
「危険性は通常電池と変わりない。電池の中の放射性核種は微弱とはいえ、活性だ。だが密封されているので危険はない。だが、破壊行為が常に問題を呼ぶように、電池を壊して開けた場合、放射能汚染の恐れはある」
原子力電池BV100は、マイナス60℃からプラス120℃の温度でも機能し続け、火災の恐れはない。開発者は、この新技術は航空宇宙通信システム、AIベースの機器、医療機器、ドローン、ロボット工学など、事実上無限の応用範囲があると考えている。Betavolt New Energy Technology社は2025年末までに、より進化したバージョンを市場に投入する計画だ。現時点では原子力電池の価格に関する情報はない。
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