あと数日で日本のJCBのクレジットカードがロシアで使えるようになる。発行と取り扱いに先鞭をつけるのはスヴャジ・バンクである。ほぼ同時にガスプロムバンクも取り扱いの意向を示した。
JCBカードの利用者は8700万人といわれ、世界190カ国2800万店舗で取り扱われている。そのロシア・デビューはすなわち、ロシアの金融サービス市場におけるニューフェイスの登場であり、またすなわち、現在ロシアで支配的シェアを誇っているMaster CardやVisaの対抗馬の出現である。
ところでアジアのクレジットカードは、日本のJCBであれ中国のUnion Payであれ、もう何年も前からロシア進出を狙っていたのに、ロシアの銀行各行はあまり積極性を示してこなかったのである。何が今回、JCBとの提携に弾みをつけたのか。スヴャジ・バンク経営副部長オリガ・オレイニク氏は当ラジオの取材に次のように答えている。
「ロシアの銀行カード市場で競争するのは難しい。主要な銀行はほぼ全てVisaとMasterCardを採用している。我々はこの状況に、手数料などの点で挑戦しようとしている。JCBがロシア進出を狙っていることを2013年に知り、ほとんど取り扱いを即断した。他に先んじて発行すれば、この商品で市場を席巻できる、と考えたのだ。そこでビジネス戦略が練られた。我々は3月23日にも発行を開始する。今年一杯で11万枚を発行する計画だ。3年後にはこれが50万枚となっていよう」
オリガ・オレイニク氏は、「既に他社のカードを持っている人にも、新たなカードを持つ意味はある」と語る。万一VisaやMasterCardのオペレーションに支障が出たときに、JCBが保険となる、というのである。実際、2014年、対ロ制裁の対象となったロシアの一部の銀行でこれらクレジットカードのサービスが停止された。
しかしそれでも何周も遅れてのスタートである。JCBはどうやってロシアでシェアを伸ばしていくのか。
「JCBカードは特典が充実している。特に外国のオンライン・ショップ等における買い物で、キャッシュバックが充実している。アジア太平洋諸国、たとえばタイ、インドネシア、日本、中国、香港などによく旅行するクライアントには、ホテルの予約や自動車の手配、レストランその他の施設利用で幅広い割引がきく。発行はまだほんの計画段階だというのに、既にカード取得希望者が列をなしている。皆、4-5月のいい季節に、外国旅行を計画している。たとえばJCBカード取扱店が広範なネットワークをなしている、米国へ。JCBカードを欲しているのは、現状、このような人々である。つまり、よく外国に旅行する人々。しかし、ロシア国内における、JCBカードを利用することから得られる特典が充実すれば、より広い層がカードを欲しがることだろう。JCBはいま、ロシアにおける「ロイヤリティ・プログラム」を策定中だ。絶えず成長していくプログラムである」
自社リサーチによれば、JCBはVisa、MasterCardに続いて、取り扱い店舗数で世界第3位を占める。ロシアにはしかし、JCBカード取扱店が決定的に欠けている。スヴャジ・バンクの調べでは、その数は現在、30万。たしかにここ最近、商店やレストランにJCBのロゴステッカーを見る機会は増えているが、まだまだ少なすぎる。JCBは事態の改善のために、銀行各行と設備の設置に関する交渉を加速させている。
スヴャジ・バンクはカード発行に合わせて、ロシア全国の郵便局に1万8000箇所のPOSターミナルを設置するなど、サービス担当部局を稼動させる。ところで同行は、多くの支店をシベリア・極東に展開している。JCBのロシア進出のスタートダッシュはこの地域が担うのかも知れない。何しろシベリア・極東は、アジアとの接触が圧倒的に濃厚である。そこでは他の国際決済システムよりも、JCBを使った方が遥かにお得なのである。
スヴャジ・バンクは今年に入ってから中国のUnion Payとも協力合意を結んでいる。かくして中国カードがJCBに先んじたわけだが、まだフル回転というところまでは行っていない。