これを受けモスクワ当局は、ロボットを孤独なお年寄りの話し相手とする計画をぶち上げた。小言を聞いてやるなど、会話の相手となり、日常生活を支えてくれるロボット。その一番の特性は、感情表現ができることだ
人工知能および会話機能の開発は、スコルコヴォ・イノヴェーション・センターに本拠を置く「ナノセマンチカ」社だ。同社はロシアにおける人工知能の開発の旗手である。
ロボットの名はレクシーという。一見すると、サッカーボール大のプラスチックの箱である。電源に接続すると動き出し、徐々に個性を獲得していく。レクシーは自分のことを異星の知性体である、と考えている。ただし、地球人と共通の言語をもつ、異星の知性体である。詩を読むこともできるし、世界の最新のニュースについてご主人様と意見を交わすこともできるし、目覚ましを設定したり、薬を飲む時間を思い出させてくれたりと、八面六臂に活躍する。ナノセマンチカ社の言語学セクション代表アンナ・ヴラソワ氏によれば、ロボットの脳には印刷されたテキストや音声による要求を認識するプログラムがセットされている。投げかけられた質問に対し的確な答え方を知らない場合は、うまいこと話題をかえることもできる、とヴラソワ氏。
「我々は、当の話題についてロボットが何も知らない、というケースも想定している。一定の行動モデルが設計されており、中でも一番ポピュラーなのが、ロボット自身が話題を持ち出す、というものである。ユーザーの質問を正しく分類できないときには、別の話題を提示する。たとえば、最近のニュースだとか、サッカーだとか、音楽だとか。つまり、ロボット自身が、この話なら話せるというテーマを持ち出すのである」
レクシーは喜んだり、ふてくされたり、怒ったりする。感情を表すには、カメレオンのように体色を変化させる。このような話し相手がいれば、もう退屈することはない。5月にはサンプル第一段がモスクワ市民に送り込まれる。