これは国際原子力委員会(IAEA)の専門家チームによる視察の最終日に起こった。IAEAの専門家の視察は今年に入ってから2回目だ。専門家たちは2月に訪問した際に、視察に関する中間報告の準備を計画した。しかし報告は追加の視察結果が出るまで延期された。2月末に汚染水流出に関する情報が報じられたからだ。当時、東京電力は、2号機の原子炉建屋の屋上に汚染水がたまり、排水路を通じて海へ流出した可能性が高いと発表した。そして3月に再び汚染水を保管するタンクを囲むせきから放射性物質を含む雨水が漏れ出した。
なお、福島第1原発では、2011年3月の事故処理に関する作業が全速力で行われている。専門家たちによると廃炉作業は約40年続くという。つい最近、福島第1原発では2台のロボットを使用して、初めて1号機の格納容器内部の状況を調査することに成功した。格納容器内部の放射線量は非常に高く、人間であれば約1時間で死にいたるほどの高さだった。ロボットは2台とも致死的放射線量に耐えられず、「英雄的な死を遂げた」。ロボットによる調査で、格納容器内部1階部分の複数の場所の放射線量が毎時4.1-9.7シーベルトであることが分かった。なお人間にとって危険ではない放射線量は毎時0.2シーベルト未満だ。また格納容器下部に水がたまっているのも発見された。今後は水陸両用ロボットで調査されるという。
現在、汚染水処理は最も困難な問題の一つとして残っている。事故処理作業員たちにとって、汚染水の浄化と流出防止は重要な課題だ。地上のタンクには、24万トン以上の液体が貯蔵されている。ロシア科学アカデミー原子力エネルギー安全発展問題研究所のラファエル・アル チュニャン副所長は、次のように語っている。
「福島第1原発の1号機、2号機、3号機では冷却のために一日に100-300トンの水が注入された。同時に原子炉建屋などの地下には1日約400トンの地下水が流入している。それが混ざり合って汚染水となる。これを何とかしなければならない。液体放射性廃棄物を乾燥残留物にして一般的な方法で固体として埋めるために、液体放射性廃棄物を処理するための設備がつくられた。しかし水の処理は追いついていない。そのため継続的に液体廃棄物の量は増えており、原発の敷地内はタンクで埋まっている。放射性物質を含む汚染水はたくさんたまってしまった。この問題の解決策はまだ見つかっていない。しかし!もし汚染水が漏れて、福島第1原発では頻繁にそれが起こっているが、その一部が海に流出したとしても、悲劇的なものは何もない。当時、英国とフランスの2つの核燃料再処理工場は、海に直接液体放射性廃棄物を放出していた。放射能濃度は、フクシマと同じだった。そしてこれは怠慢ではなかった。私たちはフクシマで事故が起こった直後に、海水のサンプルを採取し、モデリングした。予想通り、沿岸部では放射能が高まっており、魚も汚染されていた。しかし時の経過と共に、自然環境によって放射性物質は数千分の1を残して海に溶ける。そのため、悲劇的な大惨事も、不明なことも、難しいこともない… ただ非常に大変な作業であるだけだ。」
アル チュニャン副所長によると、福島第1原発の問題を解決するためには、独創的な解決法と世界の経験を取り入れる必要があるという。今回の検査終了後に発表される予定のIAEAの最終報告に、必要不可欠な勧告が含まれるかもしれない。