ジャカルタでの安倍首相、習国家主席の会談は中国、日本両国マスコミの関心の的となった。新華社通信は安倍、習会談の本質を短くまとめたものに限定された。これに対し、日本のマスコミは日中関係が一時的に悪化した時期に行われた会談の結果を評価し、両国の関係が一時期の最悪状態から徐々に脱しつつあることを印象づけたと指摘した。
元民主党政権で内閣官房副長官を務めた経験のある斉藤勁(つよし)さんもラジオ「スプートニク」からのインタビューの中でこの会談を前向きに評価し、次のように語っている。
「首脳会談が開催されたのはいいことだと思います。前回は北京APECの際ですが、ほとんど時間のない、会談にもならない形式的なものでした。十分時間があったかどうかは別の話として、首脳会談があったことは評価したいと思います。」
世界のマスコミは、安倍首相は会談のなかで、アジア諸国に対して日本は、日本帝国軍から受けたアジアの民族の苦しみに対して謝罪した社会党の村山富市元首相の敷いた路線を継承していくことを約束した。それでも多くの専門家の見解では、過去の問題によって日中関係は依然として非常に複雑なままに留まっている。斎藤氏はこれに賛同し、次のように語っている。
「日中間についていえば、侵略は事実ですし、侵略した側、された側の関係はずっと続いていくわけです。村山談話を政府を代表したものとして踏襲してきたわけですから、談話を口にしたか否かを問題にすること自体、問題であり、これを安部首相がいろんな言葉の端々でいうことで侵略された国の指導者も国民も心に傷がつくわけです。日中間で一番大事なのは歴史認識だと私は思います。それから尖閣の問題があります。航行の安全、漁業という現実的な問題を話し合えばいいわけです。尖閣問題はありますが、それよりも最優先すべきは歴史認識だと思います。」
いずれにせよ、ジャカルタでの安倍、習首脳会談はここ数年間に領土問題、歴史問題から深刻に悪化していた日中関係を健全化にむけて後押しする一助になったといえる。この機会を日中が利用することができるかどうかは、日中関係の急展開を虎視眈々と見守る米国の立場にも多くかかってくる。その立場がいかなるものになるかは、数日後に控えた安倍氏の米国訪問の際にも明らかにされる。