「シャングリラ対話」の目的は、世界で極めて重要な同地域の安定や安全の維持について話し合うことだ。しかし、「シャングリラ対話」に参加しているロシアの著名な東洋学者、ドミトリー・モシャコフ氏は、同会議の雰囲気は年々緊迫しており、この会議で安定性や穏やかさに期待することはできないと述べ、次のように語っている。
「これは南シナ海で起こっていることと関係している。南シナ海では現在、中国が岩礁やサンゴ礁を埋め立て、係争諸島で新たな人工島を建設している。南シナ海の地図を実際につくり直す必要がある。なぜなら以前、スプラトリー諸島(南沙諸島)最大の島は、シンガポールが管理する太平島だったが、今は中国が埋め立てたファイアリー・クロス礁(中国名:永暑礁)となったからだ。状況は特に複雑だ。なぜなら中国が島へと変化させ、そこにインフラを構築しているこれらのサンゴ礁は、船舶の往来が激しい海域にあるからだ。中国は同海域に対する管理を近いうちにも正式に現実のものとする可能性があり、これはベトナムやフィリピンをはじめとした東南アジア諸国の正当な抗議を引き起こすかもしれない。」
米国は、中国のこのような活動に深刻な懸念を表明している。米国務省のラッセル次官補は、「皆さんは朝目を覚ました時に突然、中国がたくさんの監視所を建設しただけでなく、そこに軍事システムを構築したことを発見するかもしれない」と語った。米国は、不満を抱く中国の隣国を支持しながら、東南アジアへの影響力を強め、そこから自国にとって最大限の利益を引き出そうとしている。中国は「シャングリラ対話」で、米国や南シナ海の近隣諸国から激しい非難を浴びる可能性がある。対立は勢いを増している。そのため勢いを抑えるためには、多大な努力と、それを望む意思が必要だ。