MERSコロナウイルスは肺炎などを引き起こすウィルス。最初の感染者は2012年、サウジアラビアで確認された。最近になってよくこの名が聞かれるのは、既に多くの国に感染が及んでいるからである。列挙すれば、サウジアラビア、カタール、ヨルダン、フランス、ドイツ、英国、UAE、チュニジア、イタリア。これに韓国が加わった形である。このウィルスについて、ウィルス学者のドミートリイ・リヴォフ氏は、スプートニクの取材に対し、次のように語っている。
「ウィルスは重い感染症を引き起こし、しばしば患者を死に至らしめる。その自然界におけるキャリアーは、コウモリであり、また、ラクダである。基本的にウィルスは、簡単に国を跨いで持ち運ばれる。たとえば、インフルエンザと同じで、感染したコウモリやヒトと濃密な接触をもてば、簡単に伝わる。ただし、蔓延を心配するほどのことはないのではないかと思う。感染の大元であるサウジアラビアではやはり相当多数の人が感染し、死亡しているが、それでも、そう広範囲にウィルスが拡散しているわけではない。現時点で既にウィルスはかなりよく研究されている。それでも、もしひとたび発症してしまったら、治療は難しい。抗生物質も役には立たない。抗生物質で治せるのは細菌性疾患だけだ。一番感染リスクが高いのはメッカ巡礼にサウジアラビアへ渡航する人たちだ」
感染拡大防止のため、韓国の複数の地域で、本日、学校が休校となっている。その数は500校に及ぶ。韓国の現状について、ソウルにあるハングク外国語大学のロシア専門家、パク・インナ氏は、スプートニクの取材に対し、次のように語っている。
「社会には若干、緊張感が漂っている。特に小さな子供を抱えた人たちが不安を覚えている。彼らがパニックに陥っているのは、薬局にマスクだの特殊な殺菌消毒剤だの何でも売っているからだ。ニュースは引っ切り無しにウィルスを取り上げ、手をよく洗うようにと繰り返している。私自身は自分の仕事を普通に続けている。ソウル市内の大学は今のところ休校していない。ただし、感染拡大が始まった地方への渡航は控えるよう勧告がなされてはいる。雰囲気は全国的に緊張している。なぜなら韓国は小さな国で、物理的に皆非常に緊密に暮らしているからだ」
ウィルス感染拡大に対するパニックは北朝鮮にも伝わっている。北朝鮮は韓国に対し、南北が共同経営するケソン工業団地に特殊な赤外線スキャニング装置を設置するよう要請した。