これらふたつの金融機関の創設は、上海協力機構およびBRICSサミットの枠内で行われた最初の出来事である。両サミットはウファで8日から10日までの開催だ。ロシアは、米国や西欧からの孤立化の試みにも負けず、世界最強の経済主体を、言い換えれば世界のGDPの30%を国内に集めた。これら諸国は互いにお金を分配することで合意した。もっとも、「貯金箱」はまだ封印を解かれる予定はないが。ロシア銀行総裁エリヴィラ・ナビウリナ氏が、G5財務大臣・中央銀行総裁会議を総括して述べた。
「近い将来参加国のいずれかがこの金融構造に支援を求めることを余儀なくされると考える根拠は私には見えない。これは、我らの金融システムに高い予見可能性、高い安定性をもたらす、保険のような構造なのだ」
ただ、新開発銀行から融資を受ける最初のプロジェクトがどのようなものになるかは、年内にも判明しそうだ。中国が提唱するシルクロードに連なる施設や、ロスネフチの施設などがそれに当たる可能性がある。ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所のアレクサンドル・サリツキイ氏は、パイロットプロジェクトの一つとして、中国の参加するその他のプロジェクトが融資を受ける可能性もある、としている。
「中南米およびサハラ以南のアフリカは、アジアから欧州に至るシルクロードプロジェクトには含まれて居ない。しかし、かなり信頼のおける、南アフリカという橋頭堡がある。中国は、いま非常に大型な大陸横断鉄道プロジェクトが予定されているブラジルと、良好な実務関係を維持している。中国は新開発銀を中南米及びアフリカ大陸における自らのインフラプロジェクトに接合するだろうと見ている」
中国が新銀行でまずしたいことは何なのか。金を使うことか、それともむしろ、同行を通じて第三国における何らかのプロジェクトに投資し、それをもって何らかの商業的利益を引き出そうとしているのか。中国のBRICS研究センター副所長、ジャン・ユアンジェ教授は次のような意見だ。
「中国は開発銀行を非常に重視している。なぜなら、同行の創設は、BRICS諸国との協力メカニズムの発展にとって、重要な段階をなしているからだ。同行の本部は上海に置かれる。初代総裁はインド人が務める。BRICS諸国は例外なく、この金融機関の枠内で、上首尾に協力を進めることが出来よう。中国はBRICS諸国の中でも最強の経済力を誇る。中国は同行の活動においても極めて重要な役割を演じるだろう。中国は同行を通じて、発展途上国の経済支援を行い、発展途上国のインフラ建設を支援する投資を行うと思う。これらの全てのことが、次なる経済協力の基礎を築くだろう。いわば、BRICS開発銀行は単にBRICS内部の経済協力メカニズムにとどまらず、BRICSとその他の発展途上国の合同協力メカニズムなのである」
西側資本の流出が強まっている。また、米連邦準備制度の通貨・金融政策の引き締めが予期され、もしそれが発動されればBRICS諸国は予算を制限しなければなりそうである。そうした中では、同行による支援は発展途上国の市場にとって特にタイミングのいいことであるかもしれない。