リュー大使はシリアに関する国連安保理会合を振り返って、「決議案は犯人の特定に関するものだった」と述べた。「決議案に関して作業を行うことも出来るが、それは全理事国の賛同があればの話だ。そう期待したい」。先の報道では、米国はロシアを含む安保理理事国とそうしたメカニズムの創設に関して密室協議を行った。
これまで米国政府は、「シリアで化学兵器を使用したのはアサド大統領の指揮する軍隊である」と全面的に確信していた。オバマ大統領は2012年8月、化学兵器の使用ないし再配備は「越えてはならない一線」であり、その一線を越えたからには米国はシリアへの軍事侵攻に向けて準備を行うとし、アサド氏は「独裁者かつ殺人者」であるとされた。
その後も米国政府は度々、「証拠となる事実を握っている」と主張した。しかしシリアが、保有する化学兵器を国際管理に委ねること、ならびに化学兵器禁止条約に加盟することに同意し、米国による軍事作戦は回避された。しかし、「化学兵器を使用したのはアサド政権である」との確信が、米国のシリア反政府蜂起勢力への軍事支援の根拠となった。
これまでシリアにおける塩素兵器の使用についての捜査は化学兵器禁止機関の創設した特別委員会が担当してきた。同委員会は報告書で、「2014年4月から8月にかけてシリア北部の3つの居住区で塩素が兵器として使用されたと高い確信をもって言うことが出来る」としながら、「それらの攻撃が誰によるものなのかを特定する権限はない」と述べていた。なお、ロシアのヴィターリイ・チュルキン国連大使は、第68回国連総会の第一会合で、「8月21日、グーテにおいて、シリア紛争に外国軍を介入させることを目的とした大規模な挑発行動があったことを示す多数の証拠がある」と述べている。