中国人がモスクワのマンション購入に関心を示し始めたのは2014年末。モスクワの不動産市場に外貨預金者らが殺到したときだった。これには外国の銀行に外貨預金を行なっているロシア人だけではない。ロシア近隣の諸国の外国人も加わった。
「これは短期的な傾向だと思う。なぜなら中国証券市場の急激な伸びによって中国人はあまりに多くの余剰資金を持つことになってしまい、それを転用する場所を探さねばならないからだ。多くの人はこれをロシアの不動産市場に投資しようとした。ルーブル切り下げによって不動産価格はドルに換算して急落したからだ。
だが今や状況は変わった。中国証券市場は暴落し、ルーブルのレートも安定化しつつある。おそらくモスクワの住宅市場で見られている中国人の購入行動も近いうちに収まってくるだろう。」
マ・ユタイ氏はモスクワ勤務、在住歴20年。会社を経営し、仲介サービスを行なっている。マ氏によれば、この半年、自分の知り合いのほぼ2人に1人がモスクワの不動産に投資をしたという。ロシアの首都モスクワは高価な都市だ。モスクワ周辺部の中古マンションでも値ははる。このためみんな、建設中のマンションを買おうとする。そのほうが安く上がるからだとマ氏は説明する。しかも、それをマンション購入のための資金が外貨であれば、当然ルーブルに交換せねばならないのだから、よけいに得だとして、次のように語る。
「以前、対ドルレートが32ルーブルだったとすれば、今は56ルーブル。しかも住居のルーブル価格はほぼ変化していない。ロシアの銀行では中国の元も換金できる。元で換算すればモスクワのマンションは1年前に比べると3-4割値下がりしているのだ。」
マ氏は、ロシアでの住居購入に走った中国人のなかでこの点を考慮している人間は少ないとして、さらに次のように語っている。
「こうして住居を取得した中国人の大半はロシアの法律を知らないと思う。正直にいえば、私自身も細かいことは知らなかった。群集心理が働き、安いうちにと思ってみんなが買いに走ったが、その後のことは後で考えればいいやと思うのだろう。」
ロシアに事務所をおく中国の国営会社のトップマネージャー、または中堅程度の民間企業の経営者。不動産市場の専門家らは、モスクワで安価なマンションを購入した中国人像をこう結んでいる。ところがモスクワの高級マンションにはなぜか中国人は関心を向けない。金持ち中国人が高級マンションを買おうとする場合、彼らは英国、米国で探そうとするのだ。