「中央ユーラシア」プロジェクトのウラジーミル・パラモノフ会長は、日本の首相の狙いは主に経済にあるとの見方をして、次のように語っている。
「私が思うにここにしめる要素は経済のほうが大きい。もちろん政治もあるが、それよりも経済問題のほうが先だろう。日本は中央アジアにとってはかなり重要な経済パートナーとなっている。『中央アジア+日本』というフォーマットがあり、この枠内で非常に多くの作業が行なわれている。ここで日本の関心はというと、自国の製品、技術の供給に多くの融資を行ないながら消費市場の獲得にのぞむことは間違いない。この意味では日本にとってはいかなる地域も重要な意味をもっている。日本にとってはこの地域は原材料の供給市場としての関心も薄くない。ここは石油、ガス、ウラン、レアメタル、非鉄金属、天然資源の豊富な埋蔵量を誇る地域だからだ。しかも日本は二国間協力に重点を置いている。」
およそ10年間、日本政府の高官らがここに現れることはなかった。この間、中央アジアの地政学的地図は塗り替えられたが、日本はこれに目をつぶっていたか、もしくは大きな意味を付与してこなかった。まず、ウファで2日間にわたって実施された上海協力機構とBRICSのサミットのフィールドでは、インドとパキスタンの上海協力機構への正式加盟が宣言された。これに関してウズベキスタンのカリモフ大統領は、核保有国であるインド、パキスタンの新メンバーの上海協力機構加盟は政治地図を変えるだけではない。国際舞台における力の配分にも影響を与える可能性がある」と語っている。グローバルな統合プロセスの観点から、これはグループ内の貿易経済協力の拡大の新たな可能性を開いている。そのほか、ロシアと中国はBRICS諸国のインフラなどのプロジェクトの融資を行なう新たな開発銀行の創設を発表したが、これには中央アジア諸国も期待をかけることができる。
第2に、日本をすでに上回った中国は世界第2の経済大国になり、この広い空間で重要なプレーヤーとしての立場をより大きく打ち出している。中国の貿易関係、投資はますます全世界を網羅しており、専門家らの間からは中国が中央アジアへ向ける関心は中国のグローバル経済の野心と関連があるとの見解が表されている。これにツールとなりうつのはアジアインフラ投資銀行であり、その資金は道路、空港建設から通信、住居までアジアのインフラプロジェクトへの融資に振り分けられることになる。
この2つのファクターは国際的な大型ドナーとして振舞ってきた日本の役割を格下げしている。日本が中央アジア諸国で経済的なプレゼンスを拡大する原則的な決定を採った場合、その資金が断られることはもちろんないだろうが、多大な関心が寄せられることももはやないだろう。そしてこの地域にはさらにもう一つの積極的なプレーヤーが登場している。7月6-13日、インドのモディ首相も8月に安倍首相が行うのと同じルートで歴訪を行うからだ。インドは中央アジア諸国に石油ガス産業、原子力エネルギー、IT、農業などの部門での協力を提案した。特にインドが強い関心を示しているのはTAPIがスパイプラインプロジェクトだ。これはガスパイプラインをトルクメニスタンからアフガニスタン、パキスタンを通り、インドまで敷設する計画で、これによりインドは安価な中央アジアのガスへのアクセスを手にすることになる。タジキスタンでは軍事空港「アイニ」の借用問題が検討されるが、これも注目されている。この軍事空港の再建にインドは2007年、2000万ドルをつぎ込んだ。インドの「メイル・トゥデイ」紙の報道では、「インドは自国軍のヘリコプターなどを移送するために中央アジアに軍事基地を得る希望を隠そうとして」おらず、これはインドの外交的野望を示している
というわけで安倍首相も中央アジア歴訪では新たな現実に直面し、日本のこの地域におけるプレゼンスをどうするか、再評価がせまられるだろう。