TPPの実現は、オバマ政権の米国アジア回帰政策の一部だった。米国は、ドルの力と米国製品の高い競争力によってTPPプロジェクトが成功すると確信していた。プロジェクトの発案者たちの考えによると、TPPは相互の市場を最高水準で開放させるとみられていた。その他にも専門家たちは、貿易のみならず、投資、労働力の移動、環境基準、外国企業が政府調達へ参加するルールなど、TPPが経済協力分野をより深く調整すると予想されることにも注目した。
一方で米国は、アジア太平洋地域における地域貿易のための新たな機構を、事実上、中国のような経済大国の参加なしで構築する意向だ。中国は、TPPは米国のルールで中国にゲームをさせようとするいつもの試みだと考え、冷ややかな態度を示している。中国現代国際関係研究院世界経済研究所のチェン・フェニン所長は、TPPプロジェクトは中国を抑え込むことを目的にしているだけではないと指摘し、米国は世界の貿易ルールを定める意向だとの見方を表し、次のように語っている。
「TPPは中国に対して向けられたものであると述べることができる。だが、それだけではない。世界の貿易ルールの策定にさらに大きな関心が払われている。TPPは、高度な基準を備えたハイレベルの総合的なシステムで、中国のみならず、世界の全ての国に挑戦するものだ。例えば、日本は圧力を受けた後、TPP交渉に加わったが、協力について合意に達することができたと述べるのは難しい。マレーシアには国営企業の問題があり、ニュージーランドとオーストラリアは、カナダにクレームをつけている。各国は米国が定めるルールに対する問題を抱えている。実際のところ、TPPは中国のみに対抗するものではなく、世界貿易機関(WTO)やその他の機関との関係における米国の不満が反映されている。そのため米国は、WTOを超えるより発展したメカニズムを構築しようとしているのだ。この観点から見た場合、米国は貿易、投資、知的財産などを含む21世紀の競争ルールを定めるためにTPPプロジェクトを考案したと言えるだろう。中国は主な目的ではあるが、同時に全世界への挑戦でもあるのだ」。
中国は、TPPの強制的な推進に関連して、二国間及び多国間形式で独自の統合プロジェクトを積極的に進めるようになった。昨年11月に中国の北京で開かれたAPECサミットでは、中国の習国家主席が、アジア太平洋自由貿易圏構想に再び注目した。米国の努力にもかかわらず、中国が主導するアジアインフラ投資銀行の設立も、中国がアジア太平洋地域の統合プロセスでさらに積極的な役割を演じることを物語っている。中国に有利に働いているのは、中国が今も継続する中国経済の競争上の優位性を支えにしながら、包括性と透明性を基盤にして自国の発展制度を構築しようとしていることだ。なお中国のプロジェクトは、ロシアのユーラシア統合構想に反してはいない。これはシルクロード経済ベルト構想とユーラシア経済同盟の連結に関する合意で証明されている。