ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所国際安全保障センターのウラジーミル・エフセーエフ氏によれば、契約解消と12億ユーロ支払いは双方に利益だ。「フランスは義務の履行を確約した。ロシアとしてはようやっと見通しが立った。お金は戻ってくるし、2隻はそれほど必要なものではなく、軍事的にも特に失うものはない。ミストラル建造合意はロシアとしては単に政治的決定だった」。
軍事予測センターのアナトーリイ・ツィガノク代表は、フランスは武器輸出国として信頼性を発揮した、と言う。
国際問題評議会のアレクセイ・フェネンコ氏は、ミストラルの一件では誰も得をしなかった、と見ている。両国とも失うものがあった。ロシアは取引期間中のインフレで一定の財政出動を行った。フランスはフランスで、国際武器市場の供給者としてダメージを受けた。米英がフランスを圧迫し、立場を変えさせるかもしれない。
ただ、契約が「単に政治的なもの」だったことでは、ほぼ軍事専門家の間では見解が一致している。ツィガノク氏によれば、複数の理由により、ロシア海軍はミストラルを全面的に利用できない。高緯度地で稼動できないこと、燃料補給用のコンポーネントがロシアでは生産されていないものであること、水・空・陸からの攻撃に対して脆弱であること、航行の際には大規模な護衛が必要であること、等だ。さらに、半年に一度補修が要るが、それには特殊なドックが要る。そもそもロシアの軍事機器を積むのに適しておらず、ロシアの様々な種類の兵器にうまく接続せず、上陸部隊の上陸も困難であるという。
ロシアは折しも「イワン・グレン」級大型揚陸艦を建造中だ。この等級としては最大級のもので、ミストラルに性能は似ているが、搭載可能なヘリ数は格段に多い。
フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン国防大臣によれば、複数の国がミストラル取得に既に名乗りを上げている。戦略技術分析センターのルスラン・プホフ所長によれば、具体的にはインド、ブラジル、ベトナムである。