フクシマをめぐる出来事は、原子力エネルギーに対する大勢の人々の信頼を失わせた。一方で、地震の影響によるフクシマの困難は、原子力エネルギーが原因で起こったのではなく、原発そのものが原因でもたらされたものであることを理解する必要がある。福島第1原発は1966年に米国のゼネラル・ エレクトリック社の設計で建設された。福島第1原発は当初からあまり安全ではなかった
しかし米国では、この種類の原発の安全基準が強化されるにつれて、近代化が実施された。だが日本では福島第1原発の近代化は行われなかった。これが地震と津波によって原子炉が破壊され、放射能が放出された原因の一つだ。そして日本では原発に対する恐怖が高まり、原発の稼動が停止された。ロシア科学アカデミー原子力エネルギー安全発展問題研究所のアレクサンドル・ボリショフ所長は、しかし経済的な理由のため、日本は原子力エネルギーを拒否することができないと指摘し、次のように語っている。
「日本の原子炉の再稼動はずいぶん前から期待されていた。福島原発事故後、日本人は、自分たちの安全システムはあまり現代的ではなく、国際原子力機関(IAEA)の要求事項や国際慣行に合致していないことを確信した。そしてシステム改革を実施した。古い規制機関が閉鎖され、それに代わって新たな機関が設置された。新たな機関は、現代の安全基準を満たした文書を作成した。再稼動を望んでいる全ての原発と企業は、原発の構成要素の安全性を証明するための複数の段階にわたる検査を受けた。フクシマの事故後、もちろん安全基準は強化された。原発を運営する会社は原発を近代化し、様々な種類の安全保障システムを追加し、作業員を教育するために資金を投入しなければならなかった。そのため、いま日本で再稼動に向けて準備している原発の安全性はフクシマで事故が発生した時よりも著しく高まっている。
福島第1原発事故による日本経済全体への損失、また全ての原発が閉鎖されたことに関連した日本人の生活レベルへの影響は、非常に顕著だ。そのため私は日本の同僚たちが数々の困難を克服し、原子力エネルギーへの回帰プロセスを始めたことをとても嬉しく思っている。『川内』は、再稼動した最初の原発だ。例えば、複数の原発がこれと同じような準備レベルにある。私は全ての原発が新たな規制基準の下で再稼動するとは思っていない。いま経済成長は原発の所有者たちに、安全基準が強化されたことを考慮した上での原発の近代化と原発の閉鎖と、どちらが得であるのかを示さなければならない。私は、近代化の後で再稼動される原発が、いかなる事故も起こすことなく長い間稼動することを願っている」。
あとは日本政府が、原発の再稼動について、原子力エネルギーの拒否は不可能であるとする経済学者たちの計算だけでなく、原発の安全性に関する技師や専門家たちの結論も考慮して決定を下すことに期待するだけだ。