南北朝鮮国境での対人地雷爆発事件で得をしたのは誰か?

© AP Photo / Lee Jin-man南北朝鮮国境での対人地雷爆発事件で得をしたのは誰か?
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韓国軍の2人の軍人が、南北朝鮮間の事実上の国境になっている非武装地帯の自分達の担当区域をパトロール中、地雷を踏み重傷を負った事件は、朝鮮半島における緊張を新たに高めるものとなった。韓国軍側は「これは犯罪的挑発であり、まさに先制攻撃である」とし「すべては北朝鮮に責任がある。8月17日に開始予定の米韓合同演習『乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン(UFG)』の実施取り消しを求める北朝鮮側の脅迫行為だ」と非難している。

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しかし、事件のそうした解釈は、多くの疑問を呼び起こしている。なぜなら事件直後の4日、軍事消息筋は、韓国の通信社、聯合(ヨンハプ)ニュースに対し「この事件は、恐らく多くの確率で、あの時期降り続いた豪雨がもたらしたもので、非武装地帯全体に埋設された何千もの対人地雷のうちの一つが雨に洗われ露出し、事件現場に流された」との見方を示している。軍事消息筋の言葉によれば「もし地雷が北朝鮮により正しく埋設されていたなら、軍人は、足の一部だけではなく、命を失っていただろう」とのことだ。また韓国のテレビKBSも、この事件に北朝鮮が関係している可能性は低いと報じている。テレビ局のデータによれば、非武装地帯で対人地雷が爆発し、軍人2人が重傷を負ったという同様の事件が、2000年にも生じており、また地雷に関係した小さな事件は、これまでも定期的に起こっている。

それにもかかわらず、一週間後、韓国当局は、これまでの見方を根本的に変え、事件の責任はすべて北朝鮮側にあると非難し、首謀者や組織者を一方的に特定さえした。韓国情報部によれば、地雷設置の指揮を取ったのは、北朝鮮人民軍偵察総局長キム・ヨンチョル将軍だとの事だ。彼は「挑発活動」後まもなく、四つ星将軍という称号を得ており、韓国諜報部は「彼の昇進と地雷事件の発生が、単なる偶然の一致であるとは思えない」と指摘している。

しかし、韓国当局は、結論を急ぎ過ぎているのではないか? ラジオ・スプートニク記者は、ロシア科学アカデミー極東研究所コリア調査センターのコンスタンチン・アスモロフ主任研究員に話を聞いた―

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「この事件の被害者が重傷を負った、まさにその事が、韓国の軍事消息筋の解釈変化に影響を及ぼしたと考えている。なぜなら事件が起きたばかりの時、韓国軍は、かなりはっきりと『北朝鮮側が関与した形跡はない』と言っていたからだ。被害者への事情聴取や現場での調査も行われており、そうした発言が簡単になされたものとは思えない。それなのに一週間後突然、我々は『北朝鮮の仕業』との発表を耳にし、木造ケースに入った地雷と何かの部品が見つかった事を知った。それらはなぜか、事件直後には発見されなかったものだった。

一方韓国軍人が負った傷は。かなり重く、その補償問題はかなり大きな問題だった。それゆえ、この事を一体どう韓国の国民に説明すべきか、との不愉快な問題が持ち上がり、それで恐らく、すべてを北朝鮮のせいにしようという考えが生まれたのだろう。私は、北朝鮮側から、あるいは韓国側からの挑発行為といった解釈は信じていない。多分、今回の事件は、単に偶然の悲劇だったと思われる。なぜなら、非武装地帯には今も多くの地雷が埋まったまま残っており、地雷原マップがあっても全く役に立たないからだ。」

大雨により、北朝鮮側の地雷が韓国の管理区域に流れ込んだという出来事は、以前にもあった。しかしその時の韓国人専門家らの意見は「これは自然災害の結果であり、意図的な『破壊行為』が北朝鮮に利益をもたらす事は出来なかった。北当局は、その事を非常に良く理解していた」との点でまとまっていた。

しかし今、韓国当局は、そうしたファクターを考慮する気はないようだ。国境に、追加の砲兵隊を投入し、宣伝放送を再開させた。北朝鮮領内の施設に対する攻撃さえも検討されている。極東研究所コリア調査センターのアスモロフ主任研究員は「これは、韓国内のここ最近の政治的変化により説明可能だ」と見ている―

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「良く知られているように、パク・クネ大統領は、右派の保守グループを抑えようと長い間試みてきたが、上手くいかなかった。『強硬路線』の支持者らは、首相ポストに以前法務大臣を務め、北朝鮮と関係があるとの疑いで韓国の左翼政党、統合進歩党を禁止する事によって名を上げたファン・ギョアン氏を押し込むことに成功した後、まさに攻撃に転ずることに決めたのだ。今や、誰かのパソコンに北朝鮮建国の父、キム・イルソンの言葉が見つかったなら、その理由のいかんを問わず、その韓国市民は、北朝鮮系組織の支持者として非難される。そして大規模な米韓合同軍事演習を目前に、北朝鮮に対する宣伝放送を再開し韓国軍を完全な戦闘準備態勢に置いている事もまた、韓国の右派保守勢力の努力の論理的延長と言えるものだ。」

南北朝鮮関係の尖鋭化は、今のところ、何らかの深刻な衝突を呼び起こしてはいない。ここ最近の発言を見る限り、全体として、事態が、2013年に起きた韓国の哨戒艦『チョアン』号沈没事件後のように、ドラマチックに発展するような事はないだろう。しかし、北朝鮮が以前から、自分達に対する侵略の準備だと受け取っている米韓軍事演習を目前に、好戦的なレトリックや相互の非難の応酬を強める事は、どちらの側にも何のよい事も、明らかにもたらすことはない。朝鮮解放70周年という重要な節目の時を前に、南北朝鮮の平和的統一の見通しを単に遠ざけるだけである。

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