例えば、中国国際問題研究所付属世界経済発展調査研究所のチャン・ユェチュン所長は、ラジオ・スプートニク記者の「日本の防衛予算の増額は、アジアの情勢にどのような軍事的・政治的影響を及ぼすだろうか」との質問に対し、次のように答えているー
「影響がある事は、言うまでもない。日本は、第二次世界停戦中、アジア諸国に苦しみをもたらしたが、戦後の歴史的諸問題をはっきり認めなかった。安倍首相は、70年談話を発表したが、歴史問題に関し大変客観的に述べ、アジア諸国への直接的な謝罪は行わなかった。アジア太平洋地域における状況の変化と共に、日本は、自国の防衛政策を絶えず修正しつつある。特にここ数年、日本は、集団的自衛権に対する禁止事項を解除し『非核三原則』から離れた。そうした諸条件の中での軍事費の増額は、将来的に日本に対する不信感を高めるものだ。そうなれば必ずや、アジア太平洋地域の安全と安定に否定的な影響を与えるだろう。中国は、この問題に今後も、必要なあらゆる注意を割いてゆくに違いない。」
「もし日本が、尖閣諸島のような『離島』保護のため、実際に特別の部隊を創設した場合、中国は、そうした行動を挑戦と受け止める可能性がある。最も好ましい場合でも、中国はそれに対し、この地域での軍事力増強で応じるだろう。一方最悪の場合は、係争区域における中国の利益を守るために同様のシンメトリックな特別部隊をつくるだろう。そうなれば、日中関係は悪化するに違いない。それゆえ、尖閣防衛のための日本の特別部隊の創設は、領土紛争解決に向けた解決法として、明らかにベストとは言えない。恐らく、理性的に、ロシアが取った例に従うのではないか。ロシアは、南クリル(北方領土)をめぐり日本との間の領土問題の存在を認め、日本側に対し、これらの島々における共同経済活動さえ、日本側に提案している。それを日本が望んでいないことは、又別の問題だ。しかしいずれにせよ、南クリル周辺では、尖閣周辺のような緊張が無い事も確かだ。おまけに中国側は、尖閣に関する日本側の立場を十分に認め、この島々の運命の具体的解決は、将来に委ねる用意があり、今のところは日本と共同で島の周辺の海底資源探査を行う心積もりがあると言っている。
尖閣諸島の領有をめぐり日中が戦いを交えるつもりのない事は、明白だ。しかし、これは今のところという但し書きがつく。今のところ尖閣を守っているのは、放水用の機器を装備した日本の警備艇であり、中国側は、同様の設備のみを