練習風景を見ると、パレードでは新型中距離弾道弾DF-16 やDF-26、新型亜音速および超音速巡航弾、何らかの新型重量級大陸間弾道弾が披露される。
これまでもこうした兵器が写真に写り込んでネットに出回ることはあったが、パレードで披露されることで、それらが大々的にシリーズ生産され、配備されるという確証が得られる。他にも既存の、中国軍の主力たる固体燃料戦略弾DF-21およびDF-31、もしかしたらその改良版も披露される。 色々新作品は披露されるが、DF-16 やDF-26のような戦略兵器が一番気になるところだ。これがあれば中国の第二砲兵隊はアジア太平洋地域全域を標的に攻撃を行えるようになる。たとえば、第一および第二列島線内にある、敵の施設に。このような兵器が比較的短期間で開発され、シリーズ生産化されたところを見ると、どうやら中国のミサイル製造部門におけるイノベーション・ポテンシャルは急成長しているようだ。中国の中距離弾道弾製造能力はおそらく既に1980年代のソ連・米国のそれを超えている。
新型戦略ミサイル兵器の開発にこれほどの投資が行われているということは、将来的に、核兵器の数が増大していくはずだ。そうなれば世界の核大国たちも、その核戦略を見直さざるを得ない。何しろ冷戦を基点とするロシアと米国のこれまでの経過は、「世界にはたった2つの核超大国しかなく、その他の核大国のポテンシャルは米露と比べて問題にならないくらい小さい」という事実を前提にしていたのだ。米露双方にとって、戦略的バランスを保つべき相手は、一カ国しかなかった。そのことが両国の戦略の基礎になっていたのだ。
しかし中国の核ポテンシャルが増大し、しかも露中が接近しているとなれば、あらゆる前提が覆されるかも知れない。二つの超他国が三つ目の超大国に対して同盟を組んだなら、バランスは確実に崩壊する。翻って、同盟は組まれないとしよう。そのとき、二つの核超大国間に緊張が生じたとしたら、双方にとって、もし開戦となったら第三の超大国がどう振舞うかということが死活的に重要になる。
もちろん中国の核弾頭数がせめて露米と比較可能な水準に達するまでには相当な時間がかかる。しかし、2020年代にも、核戦略および核兵器というものの役割が急激に増大し、崩れた核戦力のバランスが国際安全保障全体に強い影響をもたらすことは、十分にあり得るのである。