レンボン貿易相は、次のように指摘した-
「ASEANの全加盟国が国際決済で主に米ドルを使用している。米国通貨の為替レートの上昇を背景に、輸入やサービスに対する支出が増加している。これは人民元の使用の検討を余儀なくさせている。地域では中国通貨の流通がより広がるべきだ。なぜならASEAN経済は、大部分が中国に方向付けられているからだ」。
「ASEANが人民元だけを当てにしていることは恐らくないだろう。貿易相は、ルピーについても言及した。なぜなら、冷静であれば中国への完全依存は、ASEANのどこの国も望まないことが分かるからだ。すでに一つの金融支援メカニズムがある。それは、『チェンマイ・イニシアチブ』と呼ばれるものだ。これは東アジアの多国間金融・経済制度で、中国の貢献額が最も大きい。ASEAN諸国の流動性の問題が生じた場合には、この積立金プールから何らかの借款を行うことができる。これはまず中国の資金、続いて、日本、韓国の資金となる。さらに別の問題もある。それは、ASEAN諸国は輸出志向の国々であり、米国ならびに欧州連合(EU)との貿易に非常に大きく左右されており、ドル決済をすぐに拒否することはできないということだ」。
東南アジアでは現在、多角化のほか、何らかの危機的現象が起こった場合に、ASEAN諸国に役立つ何らかの予防策としての『安全クッション』の模索などが進められている。その例として、1990年代のアジア共通通貨の選択を挙げることができる。当時、日本円の可能性について話し合われたが、1997年の危機後、円は拒否され、このようなグループを形成するための基盤となることが可能な通貨バスケットについてのみ協議された。今、一つの通貨のみを当てにできる国はない。ドルは値上がりし、ユーロは円と同じく停滞の危機にあり、他の準備通貨はない。コルドゥノワ副学部長は、中国株式市場の下落と中国の経済成長率の低下は、ASEAN諸国が人民元の利益のためだに選択を行うことも、客観的に制限するだろうとの見方を表している。