米提督は、北極圏内の資源獲得競争においてリーダーとなっているのはロシアと中国である、とし、遅れを取れば、ワシントンのリーダーシップ、北極における競争力と影響力が失われる、と警鐘を鳴らす。
中国は文字通り、北極に「乱入」した。まず北極に狙いをつけて、カナダの政治勢力を通じて、石油ガス会社Nexen社の資産の取得を何とか押し通した。15億ドル超の購入費用がかかった。これは北米における中国の最も高価な買収だった。その後、中国はロシアの「ヤマルLNG」の株式を買った。しかも、西側の反ロシア制裁の導入後も同プロジェクトの筆頭株主であり続ける意図を確認しただけではなく、さらに中国は、同プロジェクトに13.5億ドルを追加投資する意欲を示し、北極をめぐる闘争で、西側に挑戦状を叩きつけた。
「中国は自らの立場、自らの利益を守るのであって、私は中国が単に西側に挑戦しているとは言わない。中国は主に自国の利益を追求しているのだ。ヤマルからLNGを得るのは、中東よりはるかに安いし、近い。同時に、トランジット上のリスクは、ロシア方面ならほぼ、無い。当然のことながら、135億ドルの融資を対価に、中国はLNGの価格低減、輸入量増大といった利益を勝ち得るだろう。中国は主に、こうした目的を追求しているのである」。
今週、「ヤマルLNG」の協力発展に関する新たな協議がロシアと中国の間で開催された。交渉に近い筋は、これらの協議の後、中国の保証する投資額が増大した可能性がある、としている。しかも、西側の制裁対象になっている一部の技術・設備がロシアに供給される可能性もあるという。
「北極圏における中国とロシアの協力の開発はいくつかの点から評価できる。まず、大陸棚の石油・ガス開発。北極は豊富なエネルギー資源を誇る。だからこそ私は、石油・ガス分野における協力は、今後長らく、中国とロシアの協力の焦点になると思う。2番目は、海上物流の構築である。既にロシアが開発済みの北極航路と中国の進めるシルクロード経済ベルト、21世紀の海上シルクロード建設構想を接続させるのだ。この海上ルートが活発な物流動脈となることを願っている。実現すれば、中国にとってはヨーロッパへの最短経路となる。協力と開発にはかくも明らかな潜在力があるのだ。しかもこの潮流を加速させることを通じて両国は、例えば砕氷船艦隊や海洋探査にかかわるハイテク製品分野でも協力することができる」。
中国は2013年、北極評議会のオブザーバーとなった。このことはロシアをはじめとする評議会メンバーとの協力に新たな分野を開いた。第一には、北極での生態系のバランスを維持する上での協力である。北極評議会のオブザーバーとしての権利は中国に対し、北極評議会常任理事の同意で発効するプロジェクトに加わるチャンスを与えるものだ。