一番自殺の危険が高いのが病気の老人だ。しかし15~34歳の若者にも自殺は多い。若者の死因のトップが自殺である国はG7の中で日本だけだ。
自殺はロシアでも国民的な規模の社会問題である。昨年は前年比で自殺者が7%減少したものの、自殺者数はほぼ日本と同じ2万4600人である。自殺者数ではロシアはインド、中国、米国に次いで世界第4位。やはり未成年の自殺率が上昇している。
概して自殺の原因は精神的な絶望、経済的な困窮、肉体的な苦痛、家族不和といったものが多い。日本では事業の失敗や無職、金銭の欠乏、過労、労働環境の劣悪化、同僚との不仲などが主要な原因と見られている。高齢者の自殺については諸要因が複合する場合が多い。たとえば健康問題や金銭の欠乏、親族の重荷にならないようにとの配慮、孤独などだ。子供はいじめが主な原因となっている。
ロシアでも仕事・事業での失敗や物質的欠乏、親類を亡くした悲しみ、家族内の紛争、重病、肉体的苦痛、そして孤独が理由の上位に入っている。未成年については、親の無理解、失恋が上位だ。薬物やアルコールへの依存も自殺原因には多い。
「非常事態における法的・心理的支援センター」のミハイル・ヴィノグラードフ所長は次のように語っている。
「いま、精神的な緊張や攻撃性の水準が高くなっている。子供の自殺統計では数値が5-6倍になっている。生活が不安定になり、貧しい場合も富裕な場合も、あまり両親が子供に構わなくなっていることが原因と見られる。富裕な家族では両親が朝から晩までビジネスに精を出すし、貧しければ仕事を2つも3つも掛け持ちして、子供のための時間を捻出できないのだ。子供がほっぽり出されてしまう。ソ連時代についてはあれこれ批判も多いが、あの時代は子供は国の庇護のもとにあった。サークルとか、課外活動、スポーツクラブといったものが、誰にも利用可能だった。」
出口はどこにあるか?精神科医のミハイル・ペルツェリ氏は次のように語っている。
「けんかしたり、健康を損ねたり、授業でヘマしたり、何かを亡くしたりした子どもは、自分を深刻に見失い、自殺という挙に出てしまう。予防に効果的な手段のひとつが、信頼にみちたお喋りというものだ。自分の問題について子どもが打ち明け、普段だったら得られないような理解や応援を受ける。これで気が安らぐのだ。そしたら全てが軽く、簡単になり、自分は受け入れられている、と理解するのだ。」
欧米各国では若年層の自殺は減っているが、ロシアと日本、韓国はこの流れに逆行している。予断は許されない。