カーシン氏はこの同盟関係強化に日本は米国よりも少なからず、いや、ひょっとするとずっと多くの関心を抱いていると指摘する。その理由は日本が米国以上に中国の軍事力の伸長に大きな憂慮を感じているからだ。このため、中国との軍事政治的競争政策に引きずりこまれているのは、今や日本ではなく、米国だということができる。
この部分は、すでに採択されてしまった集団防衛の法案と並んで、中国の不満を呼ばないわけにはいかない。問題はその不満が何に流れ出すかということだ。
カーシン氏は、安保関連法を採択し、米国との軍事同盟を強化した日本を中国が罰しようという挙に出ることもありえるとの見方を示している。中国は尖閣諸島海域に漁船船団、警備艇、軍用機を差し向け、これによって緊張した状況を作り出そうとするだろう。島付近での対立は以前のとおり船通しの衝突や放水の掛け合いにとどまるだろうが、こうしたことが起きてしまうと、中国国内ではそれに続いて反日的な声明が熱を帯びて高まり、これによって中国で事業活動を行う日本人ビジネスマンは損害を蒙ることになるとカーシン氏は指摘する。
日本にとっては、中国が1945年に日本に戦争で勝った事実を自国の新たな歴史の心棒的な出来ごとにすえ、国民の政治的、イデオロギー的結束の主たるファクターとしたことが気に入らない。
もちろん、日本との深刻な軍事対立を中国は望んでいないとカーシン氏は語る。中国に必要なことは、尖閣諸島付近でそうした大胆な行動を起こすことで、東アジア諸国に対し、外的勢力、つまり米国と政治的、ましてや軍事同盟を結んではならないぞ、その代わり中国を中心としてその周りにアジアの新秩序を構築すべきだぞ、ということを示すことだ。そうしておきながら中国は自国の海軍力を積極的に伸張し続けるだろう。だがこれは、日本が安保関連法を採択するよりもはるかに前に着手されていたことだ。