このほど日本のメディアは、「日本はベトナムに哨戒艦を供給する」と報じた。戦略技術分析センターのワシーリイ・カシン研究員はこの報道を次のように分析している。
スプートニク:反中連合における同盟国として対ベトナム関係を強化する動きを、日本はどこまで進めるのだろうか。
「日本は例によって、この問題においても自立してはいない。米国に追随している。いま日本がしていることは、米国とベトナムの限定的接近の副産物に過ぎない。しかしこの接近を過大評価してはならない。ベトナム自身が、どちらか一方の側に完全に所属してしまうことを望んでいないのだ。ベトナムは米国に身を委ねることには慎重だ。両国間には深刻な不信感がある。ベトナムを統治しているのは共産党であり、そこには反体制派の問題もくすぶっており、米国の内政干渉への恐怖もある。米国が自らの価値観を輸出すればするほど、その恐怖感は高まる一方である。ベトナムを反中連合に組み込もうとする米国の試みの中で日本が演じるべき役割は、むろん、大きい。日本はベトナムが中国に対抗できるようにと、自ら持てる資源を活用していくだろう。しかし、日本は、米国より先を行く気はない。もちろん、南シナ海問題では、日本は米国側、中国と対立する国々の側に立っている。もし米国がベトナムとの協力を急激に強化するなら、日本もそのあとに従うだろう。もし米国とベトナムの信頼関係が根本的に改善し、中国が対ベトナム関係を誤ったなら、それはあり得る。しかし、中国は、ベトナムとの関係がこじれるたびに、関係修復に努めてきた」
スプートニク:ベトナムはおそらく、米国と日本がベトナムを公然と反中連合に引き入れようとしていることを理解している。ではベトナム自身、中国と対立する用意があるのだろうか。
ベトナムも、南シナ海における中国の行動を容認してはならない、ということは理解している。中国に専横を許してしまえば、地域の戦略的勢力均衡は回復不可能な変容を蒙ってしまい、もはやベトナムにも、超大国間でバランスを保つことが出来なくなる。しかし一方で、中国と関係を絶ち、中国と対立することも、ベトナムは望まない。深刻な行き過ぎ、たとえば、偶発的にもせよ、一方が他方を砲撃し、双方で内圧だとかナショナリズムの高揚だとかいったファクターが重大になった場合には、制御不能なまでに敵対が高じることもあろうが、確立は低い。戦略的観点からは、ベトナムが中国と徹底抗戦に踏み切るなど、愚の骨頂である。そうなれば、ベトナム経済は恐るべき痛手を被り、米国と日本に一義的に依存してしまう。そうすればしばらくのちには政権交代が起きよう。政権交代はかなりハードな、流血を伴うものとなるかも知れない。それはベトナムの望むところではない」