彼は次のように指摘している。現在アメリカは、約800の基地を国外に有している。第二次世界大戦は70年前に終結したが、ペンタゴン(アメリカ国防総省)のデータによると、ドイツには以前と同様172、日本には113、そして韓国には83箇所のアメリカ軍基地が存在している。また更に、何百もの駐留部隊が、オーストラリア、ブルガリア、コロンビア、カタール、ケニアなど、世界の80カ国に散らばっている。ウァイン教授の試算によると、アメリカの納税者たちは1年に平均して1万ドルから4万ドルを、海外で働く一人の軍人を養うために支払っている。しかしながら納税者たちはまず、その事実に気づくことはない。
専門家は、アメリカ駐留軍は11の航空母艦とそれらの海軍基地を含め、様々な形をとって160の国と領土に存在していると指摘している。また、宇宙空間でもその存在が増している。公正を期すために指摘しておくと、国外における基地というのは他国も有しているが、そのような基地の数は全部で30といったところだ。とするとアメリカの有する国外に配置している駐留軍は、全世界の在外駐留軍のうち95パーセントにあたる。
紛争地域に安定をもたらすことに寄与する、というかわりに、アメリカ軍の基地は時として緊張の種となり、外交活動の障害となっている。つまり、アメリカ軍の基地が近東に存在しているということが、ラディカリズムの増大と、反アメリカの機運を増大させることの、十分な前提条件となってしまったのだ。駐留軍の配置をしたことで、例えばロシア、中国、イランの国境では、これらの国々からの反撃のスケールのリスクは本質的に増大してしまった。
ウァイン教授は、アメリカの増大する軍国主義は、地政学的な勝負事の場にあえて紛争を起こさせ、基地の建設および武装という、新しい競争の背中を押している、と推定している。「反テロ戦争」はグローバルな性格を帯びた衝突の種となった。この衝突は、急進派とテロリストたちの立場を強めただけだ。そしてアメリカの利益を「ロシアと中国の脅威から防衛するための」基地の建設は、世界の列強と正面衝突している。言い換えれば、世界をより安全にしていく、ということのかわりに、アメリカが国外に有している駐留軍は戦争をより現実のものとし、そしてアメリカ軍が配置された国々の情勢は、大変緊張したものになっている。