記事の筆者で、米海軍大学で国家安全保障問題を専門に教え、ハーバード大学資格向上スクールで教鞭をとるトム・ニコルス教授は「今回の米ロサミットは失策となるだろう。プーチン大統領との会談は、解決よりも多くの問題をもたらすに違いない」と見ている。
以下ニコルス教授の見解を、まとめて御紹介したい―
「オバマ・プーチン会談には、単に、議題がない。ホワイトハウスの対外政策のルールに従うことを拒否している世界が抱える不満以外に、両大統領は、何も話すことがないのだ。
両大統領が会っても、彼らは何の話をするのだろうか? 本当に部屋に『さしで』座るのだろうか? オバマ大統領は、米国の対外政策の一連の失敗によって誘発された状況をロシアが利用しようと決め、気分を害したとプーチン大統領に愚痴るのだろうか?
両大統領の関係は、個人的によくないと思われる。プーチン大統領は、明らかにオバマ大統領を嫌っている。何のためにプーチン氏に、今一度彼が不快感を示すチャンスをわざわざ与えるのか、オバマ政権の無力さを宣伝するチャンスを又もやクレムリンに与えるのだろうか? 我々はすでに何度も、それを目にしているのにである。
こうした状況は、中東政策ばかりでなく、外交で絶えず数々の誤りを犯しているオバマ政権がもう長くないことを示している。ホワイトハウスが、この7年の仕事のあと、最も単純な一般外交の原則において、このように混乱していることは、まさに謎と言う他ない。15分以上のいかなることも記憶できない映画「Memento」の登場人物のように、オバマ・チームは、あたかも毎日をゼロから始めているようだ。
オバマ大統領は、今回の会談では、見栄えがせず、みっともなく見えるだろう。クールで計算高く用意周到なクレムリンのプロとホワイトハウスのアマチュアとの間の会談は、オバマ大統領のもとに残った評判をさらに落とすものになる。
米国外交にとって形成された状況は、まさにこの数年間、彼らによってなされている失敗の当然の結果である。2年私は、ジョン・シンドラー氏と共に、やはり専門誌『The National Interest』のなかで「ロシアは、中東で必ずや、オバマが作り出した空白をうめるだろう』と警告したが、そのとおりになってしまった。」