スプートニクでは加藤氏に、当時の体験談と、ファッションを通じた日ロの文化・経済面での協力の可能性についてお話を伺った。インタビューを2回にわたってお届けする。
スプートニク「そもそも、ビザなし交流の枠内でファッションショーをするというアイデアはどこから来たのでしょうか」
スプートニク「ビザなし交流における訪問団のスケジュールは非常にタイトです。どのようにファッションショーの準備をしましたか」
「国後島に上陸、ということになったとき、艀(はしけ)が故障だという連絡が来ました。これがないと上陸できません。ショーを控えているので、できるだけ早く上陸して準備するつもりでした。ファッションショーの経験があるはずもない人たちを、人前に立てるようにするのは大変なことです。5時間以上は必要だと心づもりしていました。しかしようやく上陸できたのが午後2時すぎです。ファッションショーの開始は午後4時です。控え室(日ロ友好の家)に着いたとき、もうショーまで1時間半くらいしかないわけです。切羽詰った状況の中で、日本側訪問団の女性たちの助けで、とにかくヘアメイクを間に合わせました。そして事前に集まってもらっていたロシア人の12,3名の綺麗なお嬢さんたちに、衣装を着せ付けました。ただ、背中が大きくあいたドレスを着る際はブラジャーを外していただかないといけないのですが、素人のお嬢さんですから、やはり嫌がるわけですね。まあしょうがないか、ということで会場へ行きました。会場はランウェイにカーペットが敷かれていて、こちらが考えていたよりもショーの環境は整っており、ちょっと嬉しかったです。しかし会場についたとき開始まで残り15分でした。つまりリハーサルの機会が一回しかないわけです。一回きりのリハーサルで、出方、入り方、立ち位置、ポーズなどの指導をしました。果たしてこれが成功するものか?と、まったくおぼつかない状態でスタートしようとしたときに、お嬢さんたちが黙ってブラジャーを外してくれたんですね。これはつまり、お嬢さん方の「自己表現をしたい」という意欲の方が、羞恥心より勝ったということですよね。」
スプートニク「ファッションショーが成功した要因は」
また、加藤氏主催のファッションショーは、日ロ友好に貢献しただけではない。このショーのおかげで、結婚相手を見つけた人もいた。2009年にショーに出演したロシア人女性が、翌年国後島を再訪した加藤氏に語ったところによると、女性は、ファッションショーを観覧していた男性に見初められ、交際をはじめ、既に結婚に至ったという。