加藤氏はこの経験を通して何を伝えようとし、何を思ったのか。
「これは、楽しいと言うより、深く感じ入ることがあった経験でした。ファッションというのは非言語-、言葉によらず何かを表現するものです。ファッションは言うまでもなく平和や豊かさの反映であり、平和産業の最たるものです。私たちは戦後、敗戦国の国民として生きてきて、平和の大切さ、豊かさについて想ってきました。廃墟から必死で立ち上がり頑張ってきた結果として、日本のファッションの今日がある、ということをまずお伝えしたかった。それと、ファッションショーを通して、日本側とロシア側が協力して何かをすることができる、ということを表現したかったのです。
2つの異なる文化が出会うと、すごく大きな化学変化が起きて、革新的なものが生み出される。これができるのが北方領土という場所だと思います。これが実現すれば、ここから文化的・経済的な爆発的な現象が起きる可能性があると思っています。何とか、二国間でこの問題が解決され、自由な行き来ができるようになりたいと思います。
日ロ間の理解が進まない情報不足の原因は、ロシアのイメージの悪さです。今の日本人はロシアに対して、ソビエト時代のイメージを引きずり、怖い国だと思っている。実際、それがそうじゃないんだというのを、どうやって伝えていくのか。メディア戦略が必要だと思います。相互理解が進んでいけば、何らかの形で領土問題の解決につながると思います。」
スプートニク「どうすれば日本人が抱く、ロシアのイメージを変えることができるでしょうか」
「見果てぬ夢かもしれませんが、このようなアイデアがあります。近々、プーチン大統領が来日するという話があります。そのときに北方四島在住のロシア人女性を東京へ招いて、私がデザインしたドレスを着てもらい、東京でファッションショーをしたいのです。それをプーチン大統領と安部首相が肩を並べて観てくれたら、と。もしそのようなことが起こって、メディアで好意的に報道されて島の実態というのが伝われば、ロシアのイメージが一挙に変わると思います。これをなんとか実現したく働きかけていますが、ロシアの方からも日本へ対して、このプロジェクト実現に向け、働きかけてもらえないかなと思っています。」