TU-22 対キティ・ホーク艦:航空兵の遊び心は海兵の心労

© Flickr / Dmitry TerekhovTU-22 対キティ・ホーク艦:航空兵の遊び心は海兵の心労
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30年前、ソビエトの戦略爆撃機が米空軍の空母グループの対空防衛圏に侵入した。

第182セヴァストーポリ・ベルリン重爆撃機部隊博物館には空撮された米空母「コーラル・シー」(USS Coral Sea)、「エンタープライズ」(USS Enterprise) 、「ミッドウェー」 (USS Midway)の写真が展示されてる。戦略ミサイル爆撃機TU-95およびTU-22が冷戦時代に撮影したものだ。

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日本海で1985年に起きた事象は軍事対立の歴史の中で最も興味深いエピソードのひとつだ。TU-22M3がペアで海上を飛行していた。TU-22は大型の機動戦術ミサイル爆撃機である。翼幅35m。空母に着陸した場合、甲板の約半分を覆ってしまうほどの幅だ。ペアのうち、一機は2発の空母攻撃用X-22ミサイルを搭載し、一機は2発の地上・船上設置式レーダー破壊用X-28ミサイルを搭載していた。

このペアに対し、米国の艦載機F-18が発進する。付近に空母グループがいるらしい。

米機のパイロットはソ連のミサイル爆撃機に接近すると、マスクを脱いでスマイルを見せ、ウィンクし、自機の腹部をさらした。そこには空対空ミサイルがあった。これに応じてソ連の両ミサイル爆撃機は、自らの発射装置をいつでも発射可能な状態にした。いわば、挨拶が交わされたのだ。しかし米機のパイロットはさらなるおふざけに及んだ。陽気なパイロットだったのだ。笑顔を浮かべて、ジェスチャーを繰り返し、ソ連機のパイロットらに「着陸」を呼びかけた。真下には多目的艦「キティ・ホーク」が待っている。甲板にはずらりと戦闘機、対艦機、偵察機が並んでいる。両ソ連機はそちらへ向け、下降した。

空母キラーの異名をとるTU-22のペアが出現すると、「キティ・ホーク」の甲板に、明らかに緊張が走った。2機の戦闘機が緊急発進を試みたが、慌てたために互いの走路を遮ってしまい、離陸に失敗。甲板上のパニックを写真に収めようとソ連機が写真機を向けたが、先のF-18が自らの機体でそれを遮る。ならばと両ソ連機は、甲板への着陸を偽装した。

本当に着陸するかのように、高度を下げながら車輪を出し、フラップを動かす。それが偽装なのかどうかは、操縦している当人にしか知りようがない。米空母は恐れおののいて待った。間もなくソ連の爆撃機によって、艦載の全ての戦闘機、司令部その他が破壊されるだろう、と。各5トンを誇る2発のミサイルが甲板を大破させ、50トンもの灯油を燃焼させれば、鎮火に一週間かかるほどの大火となるだろう!

果たして「攻撃」は成功した。もしこれが実戦だったなら、写真撮影を阻むために真下に入ったF-18を、TU-22はすぐさま破壊してしまっただろう。しかし、ついには撮影に成功、得られた写真は極東司令部とモスクワに贈られた。そこには米空母を一時支配したパニックが克明に写されていた。

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