「ひとつには、ラヴロフ外相とイワノフ大統領府長官のセッションのような、テレビ中継されない部分を直接聞けることです。また、ヴァルダイ会議を支えているロシア側の専門家たちは、皆がそれぞれ個別の肩書きを持っており、ロシアの政策の作成に何らかの形で関わっている人が多いのです。それらの人々と交流を持ち、互いの知りたいことを情報交換することは有益ですし、現状を正しく知って初めて、今後の日ロ外交を予測することもできるわけです。このようなつながりが持てることがヴァルダイ会議というフォーマットの意義だと思います。」
畔蒜氏は、ヴァルダイ会議発起団体のひとつであるロシア外交問題評議会のメンバーらと親交を深め、意見交換の場としてのフォーラム等を企画運営してきた。
「日本は諸外国と異なり、従来霞ヶ関がシンクタンクとしての役割をも担っていました。しかしこのグローバル社会において、外交は国と国とのチャネルだけでは不十分です。民間のシンクタンクの役割はこれからも増大していくでしょう。私も、政府の人間ではありませんが、ロシア人専門家らに日本の考え方を伝え、民間外交を担っているという気持ちで取り組んでいます。」
また、東京財団の秋山昌廣理事長はヴァルダイ会議によせた寄稿「ガバナビリティの限界」の中で、グローバル・ガバナビリティは特に国際安全保障の分野で自身の限界を示しており、世界唯一の超大国であるアメリカの力は弱まったと指摘している。
国連などに代表される既存の機関や国家間外交だけでは世界の安全が管理できなくなっている今こそ、民間外交の積み重ねを政府レベルに反映させていけるよう、民間シンクタンクの取り組みに期待したい。
徳山あすか